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愛憎渦巻く世界にて

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第33章 ボウセン



 そのころ、王城の敷地内にある監獄では、クルップが牢屋の中で堂々と立っていた。
 彼の周囲には、「ルームメイト」である捕虜たちが倒れている。死んでいるのではなく、気絶しているだけだ。

 クルップは、この捕虜たちと勝ち抜き形式のケンカをし、見事勝利したのだった……。彼は別に、筋肉隆々の大男というわけではなかったが、格闘戦は十分に心得ていたのだ。
「まったく、めちゃくちゃやりやがって」
ただ、無傷の勝利にはならなかった。傷があちこちにでき、服はボロボロだ。
「……近いな」
ケンカに夢中になっていたため、首都が激しい攻撃に晒されていることに、今さら気づいた。

「生きてるか?」
看守を務めていた兵士が戻ってきた。クルップは彼に、貴族階級である自分への処遇改善を求めていたところだった。
「あっ!!! 何があったんだ!?」
ボロボロのクルップを見た途端、その兵士は声を上げて驚いた。
「ストレス解消に遊んでいただけだ。それより、オレの処遇改善はどうなったんだ?」
少しでもマシな見た目になるよう、服を調節するクルップ。
「いや、おまえは今すぐ釈放だ」
その兵士の言葉を、クルップは信じられなかった。激しいケンカのせいで、自分の耳がおかしくなったのかと、彼は思った。
「ほら、出ていいぞ。……というか、早く出ろ」
追い出されるように、牢屋から出るクルップ。
「こんな状況で、オレを釈放してどうする気だ?」
クルップは、これは何かの罠だと考えた。
「自分の上官に聞けよ。外に出たところにいるから」
兵士はそれだけ言うと、気絶している捕虜たちの様子を見始めた。
 首をかしげつつ、その場を後にするクルップ。


「おいおい、どうしたんだ!?」
監獄から敷地へ出た途端、ゲルマニアから声をかけられた。彼女は、出入口のドアのすぐ脇にいた。彼女の突然の登場に、クルップは驚く。
「ゲルマニア姫こそ、どうしたんですか?」
「いろいろあってな。おまえには、かつて同様、私の副官を務めてもらいたい」
さすがのクルップも、混乱し始めていた……。
「まず、一体全体どうなっているのかを教えていただけますか?」
「いいだろう」
激しい音が響く中、事の顛末を話し始めるゲルマニア。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん