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愛憎渦巻く世界にて

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第1章(序章) ハジマリ



 その少年は、轟々と燃える家々の間を叫びながら走り回っていた……。険しい顔つきから、ジョギング中でないことは明らかだ……。

「母さん!!! 母さん!!!」

 叫びながら走っている少年の外見は、10代中頃で、少し長めの茶髪を揺らしていた。ガキっぽい外見だったが、イケメンであることには違いない。小学校の周辺をウロウロしていたとしても、不審者扱いされることはないだろう。

 彼が今いるのは、石灰岩による高い山々と深い森林に挟まれた豊かな農村だったが、今やほぼすべての建物が炎に包まれており、火の海と化していた……。火山の噴火口と大差と変わらないほどだ。
 もし長時間露光で遠く離れた高所から撮影すれば、奈良の若草山の山焼きのような美しい写真を撮影できることだろう……。村の建物は木造や石造りのものだけなので、雨が降らない限り、村全体が燃え尽きるのは避けられない……。
 物見台のやぐらが焼け崩れ、異常事態を知らせるための鐘が地面に落ち、うるさい金属音を立てた。その近くには、死体が転がっており、血が地面に流れている。そして、その血の流れは、別の死体から流れる血の流れと合流していた……。
 周囲をよく見回してみると、あちこちに死体が転がっている……。焼死体もあったが、切り裂かれた死体や矢が突き刺さった死体のほうが多かった。どうやら、この村は攻撃され、放火による火の海となったようだ……。

 少年は、一心不乱に走り続け、ある藁ぶきの家の前で立ち止まる。どうやらその少年の家のようだが、閉まったままのドアを除き、全ての窓から炎が顔を出している。間違いなく火災保険が下りるぐらい、彼の家は盛大に燃えていた……。

「母さん!!!」

 少年は、急いで家のドアを開ける。家に逃げ遅れた母親がいるのだろう。しかし、少年はドアを開けた途端、呆然とその場に立ち尽くす……。
 逃げ遅れた母親は、テーブルの近くで倒れており、すでに全身を炎が覆っていた……。彼の母親はもう焼け死んでいたのだ……。仰向けなのかうつ伏せなのかもわからないぐらい、黒焦げになっている……。
 自分の母親だった物体から発せられる肉や髪の毛が焼ける嫌なニオイが、少年の鼻を襲い、少年はその場で嘔吐した……。母親の焼死体を見た少年は、ただ意気消沈するしかなかった……。

 すっかり吐き終えた少年は、弱々しく回れ右をして、燃え盛る家の前でうずくまる。そして、彼は大声で泣き始めた……。こぼれ落ちた涙は、炎で熱せられた地面に落ちていく。
 その大声はとても大きく、村で起きている大惨事を象徴していた。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん