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頭上の雪

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窓から外を見ると、雪が降っているのが見えて、慌てて外へ出た。
 最近はとても寒くて外に出る気にはならなかったけど、丁度外に出る用事があってコートを羽織っているところだった。窓から見る雪は白くてふわふわしていて、まるで天使の羽のようだと思っていた。
 玄関を飛び出して、天を仰ぐ。周囲に連なるビルを背景に雪は白く鮮やかだった。あまりに美しい、人間に汚染された世界のものだと思えない光景に息をのんだ。
 自分の体にも雪が落ちて少し積もっていた。こうして、何もかもを白くしてしまうのだろうな。と思って頭上を見上げた。自分に落ちてくる雪を眺めるつもりだった。しかし。
 天から舞い降りる雪は、どれもが灰色だった。黒いと言ってしまってもいい。雪は、白くなかった。お前に触れる雪は灰色なのだと、言われている気がした。
 そうか、やはり人には、見せてくれないのだな。
 白い雪は全て無機物のためのもの。人に触れる雪は灰色で、すぐにとけてしまうのだ。とても悲しくなって、白い息をはいてうつむいた。そして蝙蝠傘をさして、用事を済ませるべく歩き出した。
作品名:頭上の雪 作家名:こたつ