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D.o.A. ep.17~33

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Ep.18 戦いの予感




「ほんッとーに!すまん!!」

立ち話もなんなので、と適当に入った喫茶店内。
テーブルに打ちつけられるように、そして実際に額をぶつけながら下げられた頭に、ティルは閉口した。
「そしてありがとうございました!!」
隣席からの視線が集中し、居た堪れなさを覚えたティルは、半眼の視線を彷徨わせる。
しばらく経っても頭を上げようとしないので、
「顔を上げろ。…なんだ。藪から棒に」
「礼が言いたくて、ずっと探してた。なんか、毎日顔見てたから久しぶり」
朗らかに笑うと、ライルは正面のティルの居心地悪そうな表情を見て、首を傾げる。
「俺のこと、随分助けてくれたってな。ただ一緒の班ってだけでしかないのに、命がけで」
ティルにとっては、そこまで感謝されるようなことをした認識はうすかった。放っておかなかったのは、打算もふくまれていたためである。
ライルが、武成王ソードの息子のようなものであるということは、軍に属しておれば誰とて知っていることだ。
そんな少年を助けておけば、後々武成王に、多少の無理でもとおしやすいのではと考えていた。
しかしながら、打算だけで生きているわけでもないので、少しは情がうつっていたのかもしれない。口が裂けてもいいはしないが。
「ここの料理うまいよ!礼と言っちゃなんだけど、おごらせてくれ!」
「いらない」
「え、そう?つれないなあ。でもさ、嬉しかったよ。やっぱりお前っていいやつだな、けっこう性格悪いけど」
それは褒めるようなていをとって貶しているのか?
ティルは穿ってみた。

通りかかったウェイターに手招きして、注文をする姿を、ティルは無言で眺める。
―――「アライヴ」。
こんな何の変哲もなさそうな少年の内に、あんなものが潜んでいたとは、到底信じがたい。
冷えた水で唇を湿らせつ、「アライヴ」について思いかえす。
暴風にて魔物を一掃せしめ、削岩機じみた破壊力をもつ風球で洞窟を遠慮なく穴だらけにした。
いかなる深手を負っても眉をしかめる程度で、瞬時に傷を治癒するでたらめな回復力。
まったく怪物としか形容できぬ男であった。あんな怪物の口から理解できる言葉が発せられていたのがふしぎなほどだ。
――――極上の夢見だったさ。
不意に「アライヴ」が喋った、初めての言葉が甦る。

「…どんな夢を、見たんだ」
「あ?今朝の夢のはなしか?夢占いでもすんの?」
うーん、と悩み始める彼に、ティルは違う、と否定を入れ、
「4日前の…」
「………?」
怪訝な顔をするライル。まあ、当然だとは思う。4日前に見た夢の内容など憶えているはずがない。食事の内容を訊ねるのとはわけが違う。
ましてやライルは、昨日までずっと眠っていたのだ。
バスタードに見せられた(とティルは考えている)夢の内容だけを正確に記憶していたほうが奇跡である。
「…全然だめだ。ちっとも憶えてない」

一頻り頭を捻っていたが、やがてそう、すまなさそうに諦める。
さほど期待していたわけではないが、夢の内容など当人にしかわからないので、例外的にあとは「アライヴ」しか知る手立てはなくなった。
そもそも「アライヴ」は、夢の内容によって目覚めたのであろうか。
それともあの時、無防備なところを魔物に襲われ生命の危機におちいったから現れたのか。あるいは両方か?
ティルは、彼が気絶したところから、バスタードのこと、「アライヴ」のことをざっと説明した。
話し終えたころにウェイトレスが、注文した品であるキノコのスパゲティを運んできたが、ライルは呆然としていて手をつけようとしない。
たしかに衝撃だろう。自分の中に、正体不明の怪物が潜んでいたなどと聞かされたら。

「…そう、か…」
情報を噛み砕き、飲み下して、やっとそれだけを呟く。
ライルがそれを認識することは、解決の糸口どころか、彼に苦悩を生むばかりのものであったらしい。
「アライヴ…」
噛み締めるように名を口にする。
「……ちょっと聞いてくれるかな」
何か思い当たることでもあったのか。ティルは先を促す。


作品名:D.o.A. ep.17~33 作家名:har