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せめて心から

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オルゴール

 借りていたCDを返すために、彼女の部屋に足を運んだ。
 コンコンとドアを叩き、中にいる彼女に声を掛ける。
「はいるよ? いい?」
 ん〜。という、いかにも面倒臭そうな、且つ、なげやりな声が返ってきた。
 ノブを廻して少しだけドアを引き、隙間に顔を突っ込むようにして中の様子を窺う。
 彼女は携帯のメールに夢中になっているようだった。
 CDを返しにきた事を伝えると『空いてるCDラックにいれておいて』と、これまたなげやりな声が返ってきた。

 CDラックの横に、梱包されリボンが巻かれた小さな箱が置いてあった。 ピンクのリボンが巻かれたその箱は、何故か開けられることなく放置されていた。
「これ、何?」
 好奇心を抑える暇もなく訊ねてしまっていた。
「誕生日のプレゼント」
 彼女は三度なげやりな声を返してきた。

 彼女の誕生日には、まだ一日早い。誰かが一日間違えて贈ってしまったのだろうか。贈った相手に密かに同情した。
 そして、興味は次の二つに移った。

 誰からもらったのか。
 どうして開けていないのか。

「前の彼氏が送ってきたの。宅急便でね。しつこい男よね」
 メールを送信したらしい彼女は、携帯をクッションの上に放り投げると、膝立ちのまま近づいてきた。

 なぜ宅急便なのだろう?
 “前の彼氏”とは会った事があるし、遠距離でもなかった。
 直接会って渡せない事情でもあったのだろうか?

 そういえば少し前に、お酒に酔った彼女が酷く不機嫌な様子で電話してくる時期があった。記憶が確かならば、二ヶ月と少し前のことだ。
 その頃に喧嘩別れでもしていたのだろう。

「開けてもいい?」
 無粋なことを口走ってしまったと後悔したが、彼女の返事は意外にもあっさりとしていた。
「いいよ」
 返事と同時に、彼女の携帯が鳴った。メールの受信を知らせる音らしい。

 彼女は、早すぎるのよ、と愚痴をこぼしながら、携帯を投げたクッションのある場所まで膝立ちで移動して行った。

 リボンを外して、包装を丁寧に剥がしていった。
 その途中、横目で彼女を見ると、すでにメールの返事を打つのに夢中になっていた。

 包装を剥がし終えると、中身は木箱だった。
 彼女に向けて木箱を差し出して、開けるよ、と言うと、ん〜。という部屋に来たときと全く同じ調子の声が返ってきた。


作品名:せめて心から 作家名:村崎右近