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南 総太郎
南 総太郎
novelistID. 32770
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『死霊』

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『死霊』


最初にお断りして置きますが、この話は所謂作り話では御座いません。

正真正銘、私めが実際に体験した事実で御座います。

これを読まれる事によって、貴方ご自身が同じ体験をなさる事も

十分有り得べく、何故なれば登場致します死霊は私めから

この紙上に乗移る危険が多分に御座りますれば、予めご覚悟の程

ご注意申し上げる次第で御座います。

不測の事態になりましょうとも、一切責任は負いかねますので、併せ

ご承知置き願います。

さて、時は平成7年12月下旬、処は山梨県の韮崎・増富線、別名

増富ラジウムラインで御座います。

拙書「黄金の秘峰」の取材のため、中央高速を下り佐久甲州街道から

このラジウムラインに入りましたのが、朝の5時頃で、未だ夜も明けずやらず

真暗闇のドライブで御座いました。

勿論私め一人の旅で御座います。

須玉町の中心部を通り抜けた後、曲がりくねった道が長く続いている処で

御座います。

集落を幾つか過ごし、大分標高も高くなり始めた時、妙な物音に気付いたのであります。

コロコロ、トン

コロコロ、トン

何かと思い、車を徐行にしエンジン音を低くして、耳を澄ましました。.

コロコロ、トン

ドアの吸殻入れにでも、何か入っているのかと思いましたが、あの狭い場所で起こるような

音ではありません。

と言って、車外からのものでもありません。

目の前の、助手席のシートの上で鳴っているのです。

助手席に何かが乗っているのです。

恐る恐る、社内灯を付けました。

しかし、そこには何も見えません。

姿形は全く見えず、音だけ聞こえるのです。

外は既に幾分明るくなり始めています。

お化けも退散する時刻の筈です。

私は、徐行を続けながら、語り掛けました。

「そろそろ、夜が明けますよ。帰られた方が良いんじゃないですか」

何回か繰り返し言いました。

こう言うと、如何にも落ち着いている様に聞こえましょうが、体はゾクゾクしっぱなしでし

た。

数分後には音は消えました。

何の霊かは判りませんが、無くなられた人の霊だった事は間違いないと思います。

土地の人にでも聞けば、判ると思います。

さて、話はまだ終わっておりません。

その事があってから数年経った或る日、房総半島中央部の山間を

ドライブしていた時です。

先年山梨県で経験したのと全く同じ現象が、再び起きたのです。

私めの車の中で。

助手席で。

今回は、同じ台詞は使えません。

だって、真昼間に出て来ちゃってるんですからね。

しかし、昼間だから怖くないんじゃないかと、皆さんお思いでしょうが

そんな事はないですよ。

却って、怖さが増すものなんです。

余程、車を止めようかとも思いましたが、後続の車も有りましたので、

仕方なくその状態で車を走らせておりました。

音はまだ続いております。

ほんとにシツコイのです。これが。

暫くして、漸く止みました。

しかし、考えてみれば、この死霊は山梨以来、私の車に棲み付ていた

と言うことになります。

或いは、私め自身に執り付いているのかも知れません。

くれぐれもお気を付け下さいませ。



おわり



作品名:『死霊』 作家名:南 総太郎