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愛の深度計

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愛の深度計


空はどこまでも青く、今日は清々しい秋晴れ。
もう10月も終わろうとしている。

あれほど暑かった夏、
いつのまにか涼しくなり、冬の到来の気配さえも感じさせる。

高見沢一郎は外での昼食を終えて、オフィスに戻って来た。
午後1時からの業務開始までには、まだ少し時間がある。
今ゆったりと自分のデスクに座り、仕事の煩わしさから開放され、昼休みの一時をくつろいでいる。

毎日、この時間は日経新聞を読むのが楽しみ。
いつものように紙面を開き、株式覧から目を通し始める。

そんな僅かながらの至福の時を楽しんでいる時の事だった。
直属部下の榊原裕樹がすり寄って来た。
そして唐突に聞いて来るのだ。

「高見沢さん、人生経験豊富でしょ、これにどう返事したら良いと思いますか?」

「人が気持ち良く休憩を取ってる時に、また仕事の話しかよ、カンニンしてくれよ」
高見沢はそうぶつぶつ呟きながら、顔を上げた。
そしてぶっきらぼうに、「何だよ?」と。

すると榊原は、手にしていたケイタイを高見沢の目の前に差し出して来る。
どうもケイタイのメ−ルが開かれているようで、高見沢は嫌々ながらもその画面に目をやり読んでみる。

「どれくらい愛してますか?」

画面にはそう表示されてあるのだ。


作品名:愛の深度計 作家名:鮎風 遊