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仮面

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Monster



 あたかも人間であるかのように擬態している化け物たちが、好き勝手喚き散らしてふんぞり返っている。見るのも醜い、己は優秀だと信じ込んで疑わない愚かな生き物が。
 心底嫌気がさす。五月蠅いことこの上ない。奴らは得意げに意味の分からない言葉たちを発して寄生を上げ、化け物じみた狂気をぎらつかせながら俺を喰い殺そうとしている。
(同じコトバを発してると勘違いしてるなんて、救いようがない)
 俺は、俺自身が正義だなんてこれっぽっちも思っちゃいないけれど、奴らの傍若無人ぶり──と言ったって奴らは人間ではないのだから人としての諺が当てはまるとも到底思えない──を正義と呼んでやるほど愚かでもない。
 生きる願望なんてものもさして持ってるわけでもないけれど、かといって奴らに隷属したまま喰い殺されるなんて冗談じゃない。そんな最悪な死に方はさすがの俺でも願い下げだ。

 毎日毎日ヒステリックに到底理解不能な言語を駆使して怒鳴り散らす。
(五月蠅い)
 歯を食いしばり、俺は俺自身が持つ殺気を抑え込む。手を下す価値もない奴らに、わざわざ俺が悪に手を染める理由はない。
(てめえらに殺虫剤が効くなら、だらしなく開いた口のなかに詰め込んでやるのに)
 ああ、まったくもって下らない。そんな妄想だけが俺を俺自身の狂気の海から救い出してくれる唯一の手段。
 人間に擬態した怪物(モンスター)たちは、無駄に生命力だけ高くて死にゃしない。だけど、俺のアタマの中でなら何回殺したって罪にはならないだろう?

 だから殺してやるのさ、てめえらを。
 毎日毎日、残虐で無惨な最期を想像して俺は嗤う。

作品名:仮面 作家名:深月