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みっふー♪
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おじちゃんと子供たちのための不条理バイエル

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【付箋】ラヴイズとらヴぇりんぐ編



「……。」
この数日、これ見よがしに鬱陶しく天パは社長机に伏せていた。
「まぁ気持ちはわからないでもないけど……」
盆に載せて人数分の茶を運んできた眼鏡少年の表情はやや同情的だったが、
「ンなのほっときゃいーアルよ、」
――ズズっ、うさたん湯呑みの茶を景気よく啜って、アルアル少女はお茶請けのすこんぶコーンを口に放った。
「――、」
と、天パがのそりと身を起こした。
「まだ熱いですからね、」
――気を付けて下さいよ、位置を気にしながら湯呑みを置こうとした少年に、
「大体なァ、ンなオマエ上から目線でよゆーカマしてられる場合か?」
半眼の目つきをさらに荒ませて天パが言った。
「――えっ」
なんでボクが責められなきゃなんないのさ、こうしてお茶まで出してやってんのに、少年は理不尽なものを感じた。しかし不満を訴えたところで状況が好転するわけでもないのはさんざん学習しているのでぐっと堪えて沈黙を保った。
とにかく向こうが言いたいことを言わしてやりさえすればいいのだ、首の後ろに手を組んで社長椅子の背もたれにがさつに体重を預けた天パは続けた。
「トンチキおさげ兄貴の横さらいやらまさかの世紀末おじさん(?)飛び入り成立やら、あちこちフラグ立ちまくりじゃねーか、」
「なっ……!」
眼鏡少年が勢い余って机に叩き付けた湯呑みから豪快にお茶が零れた。
「いくら自分がアレだからってそっちと一緒にしないで下さいよっ! ボクの場合はあくまで外的要因であって(マ)さん本人がよろめいてるわけじゃないですからっ」
「……」
天パの半眼がじっとり四分の一になった。フッと肩を揺らして不敵に笑むと天パは言った。
「――いやいやわからんよ? そりゃおっさんだって一銭にもならんタダの眼鏡小僧より権力者になびくだろフツー、」
「ふざけるな! 撤回しろよ(マ)さんに限って断じてそんなことはないっ!!」
――じゃなきゃボクが修正してやるっ!
盆を振るって眼鏡少年がいきり立つ。
「……。」
――うるさいなーもう、少女はうんざりした顔で人差し指で耳栓をした。
「そんなんどっちだっていーじゃんか、」
不毛の言い争いを続ける二人を制して少女が言った、
「あのね私いいコト考えたよ、このさい銀ちゃんとぱっつんが近場でそーしそうあいになればサクッと問題かいけつだヨ、」
「してねぇよ!」
そこだけお約束に一分のズレもないユニゾンで否定が返ってきた。少女は眉を顰めた。
「んーーー、……そーだ! サダちゃん混ぜて三すくみの三角かんけーにすればいいんだヨ!」
「……つかなんでお前だけ常に高みの見物ポジションなんだよ」
天パがガンクレた。
「そーだそーだ!」
一時休戦の眼鏡少年も後ろから合いの手を入れた。
「えー?」
少女は愛らしい顔面を歪めて不服の表情を露わにした。
「ヨシわかったこーしよう、」
神妙な面持ちで天パが口を開いた。
「ココは平等に三人と一匹でじむしょ内ぐるぐるラウンドスクエア関係とします、」
「……はっ?」
眼鏡少年の眼鏡の蔓がズレ落ちた。
「どゆことー?」
首を傾げて少女が訊ねた。
「だからなー……、」
天パは社長机の脇にひもで綴じ掛けていたチラシめもを一枚ちぎり取ると、相関図を書いて説明した。
「……なっ? コレで行けば全員が報われない代わりにハギレっ子もいないだろ?  ……とにかく俺はもう疲れたんだ、しみったれてても何でもいーから安定した愛が欲しーんだよォォ!!」
――わぁぁ! 社長椅子を真横に回転させて天パは顔を覆った。
「ずいぶんな言い様な気もしますけど……」
眼鏡少年が片頬に引き攣り笑いを浮かべた。
「……じょーだんじゃないヨ、」
チラシ裏を覗き込んで俯いていた少女がふつふつ肩を震わせた。
「おとこわりあるっ!」
――ダスっ! 少女の神速の鉄拳が社長机の天板を真っ二つに叩き割った。
「!」
「かっ、かぐらちゃんっ?」
少年は盆を抱えて青ざめた。同じく血の気の引いた天パが、割れた机の残骸に片足を乗り出して仁王立ちする少女を見上げた。
「……」
少女の凛とした菫色の眼差しが二人を射る。
「それ以上私の前でジメジメうじうじしてごらんなさいな、もともと二つに割れてるモンをさらに四分割にして差し上げてよッ」
「!!」
天パと眼鏡少年は完全に竦み上がった。机の脇で身を寄せ合って手を取り合いながら、鼻水混じりの震え声に天パが言った、
「きっ、キミのそーゆー竹を割ったよーなところっ、たのもしーっちゃたのもしーけど、男子はけっこう引くんじゃないかなぁっ?」
「ドン引き上等!!」
少女は勇ましく啖呵を切った、「私はけんさん並みに動じない男しか相手にしないね!」
「……。」
――ウンそーねー、向こうが相手にするかどーかはまた別問題ですもんねー、天パと眼鏡は揃って愛想笑いした。
「てゆーかぁ、」
ひょいと摘み上げたチラシの裏に相関図をまじまじ見据えて少女が言った、
「四角関係じゃ単純すぎてつまんないから、下のまだむんトコの三人も混ぜて七角ラヴにしよーよっ」
「は?」
天パと少年は困惑した。いーじゃんとにかくその方が盛り上がるからさァ、ノリノリで相関図を書き足す少女の上着の袖を、
「――わふっ!」
お昼寝から起き出して来たわんこが引っ張った。
「……ナニナニ?」
少女はおだんご頭をわんこの口元に傾けた。
「えっ? だったら兄貴も混ぜて欲しい? ……そっかー、そーだねー、ウチの兄貴とグラサンおじちゃんと世紀末からの使者おじさん(?)とあとセンセとセンセのおじさんて人も混ぜたらちょーど十二角形でキリがいーやねー、」
「だから何がァ?!」
天パと眼鏡が同時に突っ込んだ。
つーカンジで、少女がテキトーにノリで書き足した相関図がぐじゃぐじゃでワケわかんなかったので、今回の件はあっさりなかったことになりました。
……愛した分だけ愛されるとは限らない、それでも人は愛することを、愛を求めてさすらうことをやめられない、BYけんさんの映画にそんなんありそーでなさそーなあったらいーなオチ。おしまい★


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