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おじちゃんと子供たちのための不条理バイエル

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【付録2】かぐたんのレッツ☆わらしべガーリードリーム☆☆



そこそこ晴れたある昼下がりのことでした。
ヒマを持て余したでろべっぴん☆星間美少女のかぐたんは、人っ子一人現れないじむしょの社長椅子で舟を漕いでる同居人のおっさんの天パを一本、ぶちっと手慰みに引き抜きました。
「……!」
腕組みして寝こけていたおっさんは椅子の上で一瞬びくっとなりましたが、すぐに夢の中の陸船頭に戻りました。
「……」
おっさんの半回転ひねりにカーブのかかった銀髪を指先に眺めながら、そのときかぐたんはとある天才的あいであをひらめきました。
――そうだ、このかみのけを元手にいっかくせんきん、わらしべガールになってやろう!
思い立ったら即行動、じむしょを飛び出したその足でかぐたんは某凄腕くのいちのところに赴きました。
「!!!」
改めて商品説明をするまでもなく、眼鏡っ娘おねいさんは気配で察して生毛髪に飛び付きました。あっという間に交渉成立です。
おねいさんはほくほく顔で抜き立ての生毛髪と引き換えに秘伝の高そーなSINOBIブランドのハライタ薬をくれました。
「まいどー」
かぐたんはぺこりと頭を下げ、胸に抱えて持ち帰りました。
道の途中で、路肩に止めたいかにもな高級車のすもーく窓の向こうで、腹を押さえて脂汗をかいているVIPの人がいました。
「……。」
ちょっとやそっとの滅多なことじゃ腹痛なんか起こさない鋼鉄の胃袋ホルダーのかぐたんでしたが、だからこそたまのハライタでゴハンが食べられない辛さを誰より理解している自負があります、かぐたんは思わず近寄って行って、今しがたおっさんの髪の毛と交換したばかりの高級ハライタ薬を差し出しました。……断っておきますが何しろあとで自分でもびっくらこいたくらい、このときのかぐたんの心に欲深な感情は一切ありませんでした。ただただハライタの苦痛を和らげてあげたいいっしんで、で、神というのはこういうときにこそ降臨するものです、たちどころにハライタの完治したVIPの人から、かぐたんは思いがけぬ大枚の謝礼を受け取ったのでした。
「!」
見たこともない大金にかぐたんはヒャッハー☆となりました。なじみの乾物屋に速攻走って行って、たまりまくっていた一年分のツケのすこんぶ代を払ってもまだおつりがありました。かぐたんは残ったお金で店にあるだけのすこんぶを買い占めました。
チャイナシューズのステップも軽く、♪るんらるんら、途中公園に寄って住人のグラサンおじちゃんにすこんぶを箱ごと一ダースばかり差し入れしてやりました。
「……!」
――ありがとうありがとう、食料だけでなく段ボルハウスの建築資材まで、おじちゃんはグラサンの下に涙を流してかぐたんを拝み倒しました。だけどお礼に返せるようなものが何もないんだ、せめて俺の心からの誠意を見ていってくれ、おじちゃんはやおら地面に額を擦り付けて土下座しました。
「……、」
――いっ、いいヨそんなんおじちゃん、かぐたんは後ずさりしながら手を振りましたが、おじちゃんは土下座をやめません。それどころか土下座をしたままこちらにじりじりにじり寄ってきます。
「!」
ウヘァと気味悪くなったかぐたんは残りのすこんぶを放り出し、慌てて公園をあとにしました。
「ただいまー、」
しまったひとつかみくらい持ってくるんだった、しょんぼる肩を落としながらじむしょに戻りますと、お遣いから帰って来ていたぱっつんがかぐたんを一目見るなりパーソナルスペースをガン無視して詰め寄りました。その表情には尋常ならざる張り詰めたものがありました。
「?」
かぐたんはおだんご頭の首を傾げました。
「そのっ、マ夕゛オさんがやけっぱちに切り売りしたプライドをぜひとも僕に引き取らせてくれっ」
眼前で拳を握って訴えるぱっつんは大真面目でした。かぐたんはわけがわからず、肩に耳がぴったりくっつくほど首を傾けました。
なんでも、かぐたんのチャイナシューズの踵に引っ掛けられてでろでろ土まみれになってるおじちゃんののしイカみたいなプライドが、ぱっつんの眼鏡にははっきりと見えるらしいのでした。
「……?」
靴底を上げて確かめてみてもかぐたんには何も認識できません。が、そんなもんズルズル引き摺ってても運気が落ちそうなので、ぱっつんに言われた通り靴底からべりっと剥いだそれを引き渡しました。大事そうに受け取ったぱっつんは、代わりに姉貴がこさえた手付かずの愛情弁当をくれました。
(……。)
ありがためいわくと言っちゃナンですが、はてさて捨てるわけにもいかないのでかぐたんは困り果てました。
けれど愛らしくもカシコイかぐたんのこと、すぐに打開策を思いつきました。風呂敷包みの弁当を下げて知り合いが詰めている屯所にひとっ走り、
「たのもーーーーー!!!」
都合よく応対に出てきた局長さんが、一も二もなく姉御の特製ダークマター弁当を引き取ってくれました。弁当の代わりにと、ちょうど陰干ししようと手にしていた浅葱のだんだら羽織をくれました。――なんかずーっと長持ちにしまってあるけどたぶん着ないと思うんだよねー、局長さんは朗らかに笑って言いました。
「……。」
――うーん、別にもらってもあんまりいらないけど、だんだら羽織を持ってかぐたんが帰り道をふらふら歩いていますと、血相を変えたオニの副長さんが後ろから追い掛けてきました。
精神的な何たらがどーとかこーとか、とにかくそれを持っていかれちゃ困る、的なことを副長さんはひっしに主張しました。こちらも特に何の思い入れもなかったので、かぐたんは一家相伝のオリジナルマヨレシピと交換に羽織を返しました。
マヨレシピめもを持ってじむしょ前に戻って、疲れたのでまだむの店でおちゃにしました。なんとなく話の流れでまだむにマヨレシピめもを見せましたところ、目を輝かせてまだむが言いました。
「――どーだい、コレをアタシに譲ってくれたらカルペスタダ券さーびすするよ、」
「乗った!」
つーわけでかぐたんはなんてことないポテトサラダを懐かしのおふくろ風味に劇的に変化させるマヨレシピと引き換えにかるぺすタダ券を手に入れました。
おちゃをすませて階段を上がってじむしょに帰ると、
「……今までドコでチンタラ茶ァしばいてたんだ、」
自分だってさんざん昼寝していたくせに、社長椅子にふんぞり返って天パが言いました。
「そうだ銀ちゃんこれあげるヨ、」
かぐたんはまだむにもらったかるぺすタダ券を社長机に置きました。よく考えたら、まだむの店のかるぺすは原液ものっそケチって利益率めいっぱいまで薄めてあるので、大してありがたくもなんともないのでした。
「……。」
タダ券を手にした天パは微妙な顔をしていました。自分の髪の毛一本が巡り巡って手元に返ってきた結果であることなど、当然知る由もないのでした。


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