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ルック・湊(ルク主)

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天然



トランで少し時間をとってしまったが、ようやくナナミと一緒に出かける事が出来た。

「クスクスに来るのも久しぶりだよね。」

ナナミがニコニコと湊とルックに話しかけた。

「うん、だいぶ来れなかったものね。」

だが到着したとたん、湊に気づいた街の人が言ってきた。

「これは湊様、良いところに来て下された。港に王国軍の船がついて、騒ぎになっておるんです。こちらです。」

そう言ってくると、有無を言わさないままその人達が先へ行ってしまった。

「ど、どうする?」

ナナミが聞いてきた。

「うーん、仕方ないね、行ってみようか・・・。」

湊も渋々後に続いた。ルックも黙ってついていく。
人だかりになっているところまで来ると、湊に気づいた人々が、“湊様だ”とか言っている中で、“初めて見た!可愛い!”“すごい華奢だな、触ってみたい”などと言っているのが聞こえて、ルックは何気に目を細める。
そんな中、一人の男性が近づいてきた。

「湊様、こちらへ。こいつが、ハイランドから来た使者だとか何とか言ってるんですが、なんなら皆でふんじばっちまいましょうか?」
「え、それはいいよ・・・。とりあえず、そこに行くよ。」

そうして人だかりの中心まで来ると、一人の男性に気づいた。その男もこちらに気づき、声をかけてきた。

「これはありがたい。こちらから、伺おうと思っていたのですが。」

そう言ってニッコリと湊に近づいてきた。ナナミが慌てて湊の前に立ち、“な、何?何?”と少しかまえながら慌てたように言っている。
ルックもそっとロッドを握り直した。

「戦場ではいくたびか顔を合せましたが、こうやってお会いするのは初めてですね、湊殿。私はハイランド王国軍の指揮官ジョウイ・ブライト様の配下、王国軍第三軍軍団長クルガンと申します。以後、お見知りおきを願います。」

確かに何度も戦場でお目にかかっている、クルガン、と名乗った男が慇懃無礼に挨拶してきた。

「ジョウイ・ブライトって・・・もしかして、ジョウイの事・・・??」

ナナミがポカン、として聞いた。湊はハッとしたような様子を見せているのにルックは気づいた。
また、前のように夢を見てたんだろうか・・・?といぶかしむ。

「ええ、ルカ・ブライト様が戦死なされ、ブライト王家に残った最後の血統であられるジル・ブライト様とジョウイ様の婚儀が正式に行われましたゆえ、ジョウイ様は現在ブライト王家の次期皇王ジョウイ・ブライト様となられております。」
「え?え?え?え????えぇーーーーーー!!ジョ、ジョウイが、け、結婚!!」

ナナミがおもしろいように驚いている。ルックは湊を見たが、思った通り驚いてはいない。やはり夢で婚儀か何かのシーンを見たんだろうな、と思った。

「お二方は、ジョウイ様のご友人のようですから、式にはご出席いただきたかったのですが、そうもいかなかったので。」
「え?え?それであなたは?何がお祝いでも・・・?」
「・・・・・・・・。いえ。今日伺ったのはハイランド王国と都市同盟との和議をとり結ぶ為・・・同盟軍のリーダーである湊殿宛の書状を携えてまいりました。」
「わ・・・ぎ・・・?それって、つまり、戦いが終わる、の・・・?」
「ええ、この話し合いがうまくいけばそういう事になります。」
「ほんと?ほんと?やったね、湊!」

先ほどからクルガンとナナミしか話をしていない。その間、湊はずっと黙ったままであった。

「同盟軍のリーダー殿に、お願いするのも恐縮なのですが、城まで案内していただけますか?」
「・・・なんで?僕はここにいるんだし、ここでもらうよ?」

湊が首を傾げてそう言った。

「ここで、この書状をお渡ししてもよいのですが、この申し出が正式なものである事を示す為、それなりの場所でお渡ししたいのです。」
「ク、クルガン様、お一人では・・・」

傍についていた一人の兵士がクルガンに言った。

「心配するな、お前たちはここで待っていろ。湊殿はそのような人物ではない。」
「・・・じゃあ、どんな人物だって、いうのか、な・・・?」

ボソリ、と湊が呟いた言葉は、ルック以外誰の耳にも届いていない。

「・・・湊・・・?」

ルックが俯いている湊を心配げに覗きこむと、湊は無表情だった顔から、ふ、と笑った。
その笑みが、質は違うが、なんとなく某英雄を彷彿とさせ、ルックはそのまま少し固まる。
なんていうか、嫌な予感しか、しない。でも多分被害にあうのはこの銀髪の男だけだろう、とルックはとりあえずスルーする事にした。
周りでは、“ようやく戦争が終わるのか”“そんなの分かるものか、王国軍のやつらの言う事なんか信用出来るか!”などガヤガヤしていた。
街の外に出ると、湊はすぐに『瞬きの鏡』で城に戻る。
クルガンはこのテレポートに驚きつつも、城のホールに着いたとたん、“ここがそうですか、すばらしい”などと言っている。
そんなクルガンを、湊はもはや妖しげだと言ってもいいような笑顔でニッコリと見た。
ここが詩遠との違うところだな、とルックは何気に思った。明らかになにか企んでるのが分かる。詩遠なら、完璧な笑顔で対応するだろう。だが、湊と同じように天然なナナミはなんとも思わなかったらしい。

「湊、とりあえず、シュウさん達がいる大広間に行ってみようよ。」

普通に、ナナミが湊に言った。

「うん、そうだね・・・。とりあえずナナミは待機していて?正式な申し出とやらには時間がかかりそうだから、きちんとした話し合いには、ナナミも呼ぶから。」
「そう?分かった、じゃあメグちゃんのトコでも行ってるね!」
「うん。楽しんできてね。」

湊はそう言って、ナナミが去っていくのをニコニコと見送った。クルガンも、なんだかおかしい、と少し思ったのか、訝しげに湊を呼んだ。

「・・・湊殿?」
「ああ、ごめんなさい。じゃあ、行きましょうか?」

また、企んでそうな笑顔を見せてから、湊が向かったのは大広間などではなく、その真横にいる、ビッキーの元だった。

「どこに飛ぶの?」
「えっとねー、バナー!」
「ちょっと、湊!まさかトランに行くなら、もうちょっと人を!」

ルックが言いかけた言葉はむなしく宙に舞った。
ああ、ついつい湊の可愛さに忘れがちになるが、この子も天魁星・・・あなどってはいけないんだった。
だいたい湊が割合いい性格をしているのは知っていたはずなのに・・・とバナーに着いた時にルックはため息をついた。
国境に着くまで、湊以外(あとはルックとクルガンしかいないが)、色んな意味で大変だった。
湊にしてみれば、もはやトランへの山道などは余裕の道ではあるのだが、ルックにしてみれば湊が怪我しないかなどの心配でおちおち歩いていられない。クルガンに至っては、まったく知らない道に、まったくレベルも知らない道連れ。敵が出るたびに自分も戦いながら冷や冷やしていた。

“それでも大人しくついてくるなんて、もはやバカなんじゃないの!?”

ルックは腹立ちまぎれにそう思っていた。クルガンにしてみれば、訳の分からないまま、まったく知らないところにいきなり飛んできたものだから、ついて行くしかないのだが。

「こんにちはー。」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ