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ルック・湊(ルク主)

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誘惑



「ねえ、ルック。」
「・・・何?」

石板前で立っていたら、いつものように湊がやってきた。
とりあえずは飛び下がったりビクついたり、などといった反応はしなくなったが、髪や頬など、ふいに何気に触れるとやはりポッと赤くなる。
だがそんなところが逆に更に可愛さが増したようで、今日もルックは色々悶々としている。

「ルカってさ・・・何だったんだろうね・・・?」
「・・・は?」

ルックの横で体育座りをして膝を抱え、湊がボソリ、と言いだした。

「ほんと暴虐の限りを尽くした最低の奴だったけど・・・、絶対倒すべき敵だったんだけど・・・。なんかさ、最期が妙に切なくて・・・。」
「何言ってんのさ。倒れて頭でも打った訳?」
「・・・何気に失礼だよね、ルックって。・・・聞いたんだけど、ルカってお母さん子だったんだってね。で、お母さんを酷い目に合わせる事になった、皇王であるお父さんを恨んで、そして実際に酷い目に合わせた人を恨んで、挙句の果てに人間皆を恨んじゃったんだよね・・・。もう憎しみしか持ち合わせてなかったんだよ?なんか辛いじゃん、そんなのって。」
「・・・だからといって、何をしてもいい訳がない。」
「うん。そうだね、それはほんと、そうなんだよ。でも・・・どうにもならなかったのかなぁ、てちょっと思って。虫けら、とか言いながらもあんな風にホタルを眺めていたルカを見てね、ちょっと、そんな事思ったりした。」

ルックはため息をついて横で膝を抱えて俯いている湊の頭をそっと撫でた。

「話し合いでどうにかなる相手ではなかっただろ?あいつがやってきた事を思い出しなよ。あんな姿に絆されて、ほんと君はバカだね。いくら同情されるような境遇があったんだとしても、何をしてもいい訳がないだろ。誰しもがああなる訳ないだろ。それにあいつはむしろ倒されて良かったんだよ。最期までとんでもない奴だったけど、倒れる前に、言ってただろ。」
「・・・ん?」
「憎しみなどが消えていくって。あれはあれで、救われたんだと思うよ。君がした事で、後悔する必要も、悩む必要も、何一つ、ない。」

するとしばらくそのまま動かなかった湊だが、おもむろに立ち上がってルックに飛びついた。

「ルック!ありがとう、ほんと大好きっ。」
「ちょ!き、君ね、ほんと時と場所をわきまえなよ!」

ルックはあわてて引きはがした。

「えー。だってルックはいつも僕を楽にしてくれるんだもん。僕自身でもどう言って欲しいか分かってない時でも、やっぱこう言って欲しかったんだって事言ってくれるんだもん。嬉しいじゃん!」
「それは分かったから・・・。だからってどこでも抱きついてきたりとか、どうかと思うよ。逃げられるよりはアレだけど・・・」
「そうなの?」
「・・・なんだったら、この公衆の面前で前みたいにキスしようか?」
「!え、あれ?嬉しくて飛びつくのって、それくらいな事なの!?」

本気で驚いている湊に、ルックはため息をついた。まあ、感情が素直なのは良い事だけれども。
なんでちょっと近づいただけで赤くなったりしたくせに、そういうところ、区別つかないんだろうね。湊の脳の仕組みが見てみたい。

「抱きついたり抱きしめたり、は性的な事にも結び付くだろ。」

ルックが適当にそう答えると、湊が赤くなった。そういう反応はいいんだ?ほんと仕組み、見せて下さい。
そしてため息をまたついたルックは、ふと周りを見て、そんな湊を好意的(むしろ性的な意味で)見ているヤツらが何気にいる事に気づいた。
・・・気に食わない。

「湊。移動するよ。」
「へ?」

ルックは湊を抱え、誰ともなくあかんべぇをして消えた。
多分、それを見た湊ファンはそうとうイラっとしただろう。

「きゅ、急にどうしたの?」

ルックの部屋に移動した事が分かると湊が困ったような顔をして不思議そうに聞いてきた。

「・・・別に。お茶が飲みたかっただけ。」
「あ、そうなんだー。てっきり僕がろくでもない妄想むき出しにしてるのを見るに見かねたのかと・・・」

ガシャン。
ルックは無言で割れたカップを片づける。

「あ、大丈夫!?僕も手伝うよ!」
「・・・いや、いいから座ってて。」

もう、むしろシーナを恨む。
ルックは思った。ただでさえ無自覚に、妙なフェロモンでも出しているかのように自分や余計な有象無象まで惹きつける湊。
それにあらたなスキルが加わったとしか思えない。天然でバカとしか思えないけれどもそういう事を、湊がサラっと言わないで欲しい。
ちらり、と湊を見れば、悪びれる事も恥いる事もなく、のほほんと座っている。

「はあ、この天然バカ・・・。」
「え?なあに?」
「なんでもない。ほら、飲みなよ。」

ルックは用意したお茶を出した。湊は“ありがとう”とニッコリ笑って、フゥフゥとお茶を冷まそうと息を吹いている。
そんな様子を頬杖をついてぼんやり見ていたルックが口を開いた。

「ねえ。君は明日も特に用事はないのかい?」
「え?ああ、うんっ。まだ王国軍は引いてないみたいだしね、まだ他の街にも行けないみたい。でもシュウさん曰く、そろそろ撤退するんじゃないか、とか言ってたー。」

ルックの問いかけに、湊はニッコリと答えた。

「・・・そう。」
「?なんで?どうかしたの?」
「・・・ねぇ湊。明日も休みなら、たまにはゆっくりしていけば?」
「?ゆっくり?」

湊が首を傾げる。ルックはかすかだがニコリ、と笑う。そんな笑顔も湊にとっては嬉しい笑顔だったが。そしてそこに詩遠かシーナでもいれば、“あきらかに何か企んでいる黒い笑顔”とでも言っていたであろうが。

「そう。ゆっくり。この部屋に泊まっていったらいいよ。」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ