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ルック・湊(ルク主)

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茶会



「ちょっと。」
「ふぇ?」
「なんだって君はしょっちゅうここに座りこんで・・・挙句の果てに寝てるの・・・?」

少し石板の傍を離れ、珍しく散歩して帰ってきたら、湊がいた。いや、いたというか、眠っていた。

「あー・・・だって眠くなったんだもん。」
「いや、だったら自分の部屋で寝なよ・・・。」
「えーなんでそんな冷たい事いうのさー。ルックを待ってたのにー。」

そんなところで寝たら風邪ひくだろ。てゆうかそんなところで無防備に可愛い寝姿さらさないで欲しい、皆見てるじゃないか・・・。ルックはそう思いながらも呆れてため息をつく。

「・・・何。何か用?」
「ううん、用はない。」

はっきりきっぱりニッコリと湊は言った。

「は?だったら何してんのさ。」
「え、ここでね、ルックとしゃべりながらおやつでも食べようかなとか思って。」

見れば確かに水筒のような入れ物とハイ・ヨーに作ってもらったのか、甘そうなものがそばに置いてあった。

「・・・君ね、ここはお茶会を催す場ではないんだけど?」

内心は嬉しくて、また可愛くてしかたなくともルックはそう答えた。

「えー別にいいじゃん。ルック部屋にいる以外は、あんまここから離れてくんないし。て、今離れてたけどさ、どこ行ってたの?」
「散歩。」
「そうなんだ、僕も誘ってよ。」

もともとなぜかルックになついていた湊だが、グリンヒルから帰ってきてからは、さらになつきようが、変な言い方をすれば酷くなった。
なんなんだろう。期待、するだろうが・・・。
といっても、確かにルックの事を好いてはくれているみたいだが、ほんとうに、犬が飼い主になついているような感じと似ている気がする。
いや、それはそれで可愛いのだけれども・・・。だがやっぱり、何か違う。

あと、ここは正面入り口の奥。
あまりに皆の注目を浴びる場所。
ただでさえ色んな意味で人気のある湊。
座っているだけじゃなく、眠っている姿を色んな奴にさらけ出すとか、なんかむかつく。そんな無防備な姿が見られるのは、僕だけでありたい・・・。

「分かった。今度から誘うから。あと、こんなところでお茶会をするつもりは僕には毛頭ないよ。どうしてもやりたいなら、僕の部屋でする事。それに、今後ここで眠るなら、もう君に付き合わないからね。」

とりあえず自分になついている事だけは分かっているのを良い事に、しかたなく付き合ってあげる、といった言い方をするルック。ここにシーナがいたら、また吹き出すかさぞかし盛大にニヤニヤしている事であろう。
さりげに部屋も、湊の部屋ではなく、自分の部屋を押してみた。
・・・この子の部屋は出入りが激しいからね・・・。

「え、ルックの部屋に入ってもいいの!?ルックってば鍵かけてるし、なんか人に入られるのが嫌なんかなって思ってたー。」

尻尾があったら絶対振っていそうな勢いで湊が言う。
ああ、確かにここは本当に色んな人間が勝手に人の部屋に入ってくるようなところ。まあそれだけ仲がいいんだろうが、普段ここに立って皆に姿を晒しているルックは、自分のスペースくらいは誰にも入ってこられないで過ごしたい、と鍵をかけていた。

「いいよ、別に・・・(君なら)。」
「わぁ、じゃあ今から行こうっ。せっかく焼き菓子作ったしっ。」
「・・・君が作ったの・・・?」

首を傾げてルックが聞くと、湊は満面の笑みでうなずいた。
か、可愛い・・・。次の瞬間にはもうルックの部屋にいた。
普段出し渋る割に簡単にテレポート使っている様子。

「わーなんかシンプルで綺麗に片付いてるねっ。?なんか良い匂いがする。」
「ああ、多分ハーブか何かだろ。」
「え、まさか飾ったりポプリみたいなん作るのが趣味とか・・・?」
「・・・ほんとうにそう思う訳・・・?薬とかの研究に使ったりしてるだけだよ。」

へえーすごい、と湊に尊敬のまなざしで見つめられて、ルックは顔をそらした。

「そこに座って。」

とそっけなく言ってお茶の用意をしだしたが、これは今の自分の顔色を湊に見られない為である。

「あ、お茶ならこの中に入ってるんだよ?」
「それはそれで後で飲みなよ。せっかくだから淹れたてを。」

そう言って座っている湊に、どうぞ、とお茶を差し出した。そして自分も向かいに座る。

「わあっ。ルックの淹れるお茶って美味しいねっ。あ、これ、良かったら食べてね。」

甘いものは基本あまり食べないんだが・・・湊が作ったのなら話は違う。ルックは一口食べた。

「・・・おいしい。」
「えっ!?ほんとう!?ルックってばいつもさ、なんでもマズイ、じゃん!!ほんとに美味しいの!?」

いつもは君は手伝ってるだけで、作ってるのはハイ・ヨーだろ、と内心で答えつつも、小さな可愛い焼き菓子を食べ終え、湊を見て言った。

「美味しかったよ。」
「わあ・・・。作ってよかった。」

湊が顔を真っ赤にして喜んでいる。本当に可愛い。
気になる前はこの子もその他大勢と同じで、特にどんな顔だとか様子だとか気にしたり思ったりした事はなかった。いや、むしろ子猿扱いだったな。
好きだと自覚してからは、湊が何をしても、何をいっても可愛くて仕方がない。

好き。
好きになる理由なんて、ないと皆よく言うが、ルックにはちゃんとした理由があった。
色だ。
灰色の夢をよく見るルックには普段でも特に何も自分の中に残らなかった。もちろんちゃんと色は見えている。だが、それは脳にも心にも残らない。

だが。
この子は違う。好きだと思う前からこの子の表情や様子、行動などが目に、耳に、中に残ってしかたがなかった。そう。自覚して分かった。僕はこの子の織りなす色が好きだ。

「ルック?どうしたの?」

ぼんやりとしているように見えたのだろう、湊が首を傾げて聞いてきた。

「いや・・・。あ、そうだ。」

ルックはポケットに手をつっこんだ。湊は相変わらず首をかしげている。

「これ。」

そう言って、ルックは湊の前に手を差し出した。何かを持っているの?と湊は分からないまま掌を出す。

チャリン

涼しげな音をたてて、綺麗な小さな鎖のついた鍵が湊の掌に落とされた。

「か、ぎ?」
「ああ。君は軍主だしね。それにあんなところで眠られたらたまらない。いつでも勝手に入っていいから。」

ルックがとってつけたように言うと、湊はまた顔を赤くして、満面の笑みを浮かべた。

「ありがとうっ!!ルック!!」

殺す気か!!ルックは内心思った。これ以上2人でいるのも自分の精神上よろしくないかもしれない。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ