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「山」 にまつわる小品集 その参

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シリーズの終わりに (コラム)


『日出づる国 続編』の為の資料を集め、3月初めにはイメージを膨らませ取りかかろうとしていた。
 その頃に大震災が発生し、すべてのイメージが吹っ飛んで書けなくなってしまった。そして、書く気力を無くしてしまった。
 ほとんどの創作者がそうであったと思う。
 そこでリハビリの意味を込めて、さらにある願いを込めて・・・身近でよく知っている分野を小説にしてみようと思い立ち、『山にまつわる作品』に取りかかった。


 ゴールデンウィークに御嶽山に出かけた。
 例年より雪が多く、この頃にはいつもなら閑散としているスキー場も賑わっていた。
 私とつれあい、小太郎(ゴールデンレトリバー)は、濁河(にごりごう)の登山口から山に入った。前日から未明まで降り続いた雪で足がすっぽりとはまり、輪カンを取り付けて歩く。ところどころ凍っている箇所があった。
 細いトレールの片側下方には、雪融け水を集めて激しい流れとなっている川がある。
 他に人はいない。思い思いのペースで歩いていると後方から、小太郎の今まで聞いたこともない悲痛な叫び声が、一度だけ聞こえた。

「もしかして、川に落ちた!? 戻らな!」

 急いで取ってかえすと、凍っている傾斜地が通れなくてうろうろしていたのである。なんとかして引っ張り上げたのだが。
 犬にとっては足の付け根まで入り込む雪である。急斜面が始まる所で引き返すことにした。

 下り道で私は、あってはならない初歩的ミスを犯してしまった。
 右足の輪カンの上に左足の輪カンを乗せてしまったのである。
 ヤバッ、と思った時には前につんのめって、頭からでんぐり返ってしまった。
 ピッケルはザックに付けたまま両手にストックを持って歩いていた。
 片手を雪の中に突き立てた。
 傾斜は緩くて幸いにして滑り落ちることはなく、外傷もなかった。
 つれあいにイヤミを言われただけのこと、である。
「ふたりも遭難者が出て、面倒見切れん」と。

 行きには気付かなかった、登山口近くにある七福神の石像。目に付いたのは偶然である。なにげなくカメラに収めた。
 表紙にしようとはその時には考えてもいなかった写真である。

 スキー場の裏山で輪カンを付けて、新しいトレースを作って山頂付近まで上がり雪を堪能した後、開田高原で温泉に入った。
 私ひとり、広々とした湯船にのんびりつかっている時に浮かんだのが『極楽極楽』。
 それ以降次々に描こうとしているジャンルのイメージが湧いてきた。

 コラボ作品『エベレストは昔海だった』を書いている時には、筋の通った作品が書けるだろうか、最後までたどりつけるだろうかという不安と辛さはあったが、それ以上に意見交換できることの楽しさを味わうことができて、結果大きなプラスであったと思う。
(いきさつは、コミュニティー「跡地」のトピックでご覧になれます)

 今、自分の関心が何に向かっているかによって、気付きもしなかった対象物が意識されるようになる、という現象を実感している。


  山とは  自然である。
  自然とは すなわち「生命」
  生命とは 生きること。

 それは副次的テーマとして多くの作品に含んでいる。
 ひとまず一つの目標を達成し終えた。

 青森・岩手・山形・福島は学生時代にミニ周遊券とユースホステルを利用して、秋から冬、春にかけて何度も足を運んだ場所。心を惹きつけるその情景は、いつも頭の中によみがえってくる。
 現実世界ではあまりにも酷いことが度々生じるが、人の本質は変わらない。太古から人の本質は変わっていない。

 シリーズの全作品を読んでくださった方がいらしたとしたら、感謝の気持ちでいっぱいです。いいえ一作であっても、嬉しいものです。
 お付き合いくださり、ありがとうございました。


                      2011.9.29