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いまどき(現時)物語

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第8章  隙間の巻



浮舟は、女影武者としての任務がより明確となり、それを全うするためにコーヒーショップを飛び出して行った。

そして、それから二週間の時が流れた。
この間、浮舟はきっと充分な働きをして来たのだろう、高見沢はその報告を本日受けようとしている。

「その後、犯人に具体的な動きはあったの?」
まず高見沢は口火を切って聞いてみた。

浮舟の聡明な表情に自信のほどが伺われる。
そして胸を高鳴らせながら、「それが、スゴかったのよ」と反応良く答えて来る。

高見沢にはそんな浮舟の興奮が伝わって来るのか、「一体、どんな事があったの?」と直ぐさま聞き返した。

「高見沢さん、犯人から朝霧の会社ケイタイにメールが入ってね、

いつもの百万円要求が積もり積もったのか、まとめて三千万円の現金を東京駅に持って来いと言って来たのよ」

浮舟は新しい物語の幕を自分で開けるが如く勢い込んでいる。
しかし、百戦錬磨の高見沢、さすがまだまだ落ち着いている。

「浮舟なあ、ケイタイメールだったら、犯人の発信アドレスがわかるんじゃないの?
そこから犯人を割り出せないのか?」

浮舟はそれに対しはっきりと首を横に振り、
「高見沢さん、それがね、朝霧の個人ケイタイが盗まれていてね、犯人はそのケイタイを使って、会社ケイタイに連絡して来たのよ、

だから発信アドレスは、朝霧自身のものなんですよね」と残念そうに唇を噛んでいる。


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊