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お下げ髪の少女 後半

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第8章 隠れ家




 
 杉原と小泉は九月末頃から相次いで気が変わり、急に大学を受験することになった。就職先が決まった緒方と小宮は、受験勉強に励む彼らとは、殆ど親交が途絶えた。ときどき二人だけで映画を見に行ったりしていた。
 緒方は小説を読むことが増えていた。喫茶店で読んでいると、突然書きたくなる。だから原稿用紙も常に携帯していた。それは通常より、小ぶりの原稿用紙である。それから手帳を開くと中の体裁は原稿用紙、というものも事務用品店で発見して購入し、両方とも持ち歩いていた。書けない漢字は帰宅してから調べた。次第にそのような字も減ってきていた。
 緒方は或る書店の二階にある「グリンデルワルド」という喫茶店に、大晦日の前日の今日も午後から来ていた。
 時刻はもう、午後八時になるところだった。そこは駅前の商店街に面している割に客が少ない喫茶店だった。階下の書店で買ったものを、すぐに読みたいときに便利だった。
 観葉植物が多い店内は広く、音楽のボリュームは低い。珈琲などを一度注文してしまえば、ウェイトレスは滅多に来ない。いつもそこで勉強している人の顔も、何人か緒方は憶えてしまった。緒方も憶えられてしまったかも知れない。彼は今も書いていた。詩なのか小説なのか、自分でもよく判らないようなものだった。明け方に見た夢も、憶えていれば書いた。