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みっふー♪
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ワンルーム☆パラダイス

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(2) 105 THIS IS 高等遊戯



ひみつのやみとりひきを無事終えて、空の荷車引いてアパートに戻ってきたらすっかり気が抜けてしまった。
「……なぁエリー、」
六畳一間で、こたつぶとんを片付けたこたつにベタッと右頬を張り付けていたロンゲが言った。
『何?』
向かい合って同じく右頬をこたつに張り付けていた着ぐるみがひょいとプラカードを上げた。
「――よぉっし、今日は哀しいダジャレ(りすぺくと夏〜ず)シリーズだ!」
テーブルのあとがうっすら赤くついた顔を、ガバと上げてロンゲが言った。
『イイね!』
身を起こした着ぐるみはこたつの上のエアボタンをエア連打した。
呆けていては始まらない、一つ二つ、難関をクリアしたからって慢心は身を滅ぼす、常にフレッシュかつ柔軟に頭を切り替えて前進あるのみだ、かくてブレインストーミングを兼ねた彼らの高等遊戯が始まった。
重々しい口調にロンゲがルールを説明した。
「いいか、ダジャレ投げっぱはダメだぞ、哀しいダジャレに込められた哀しい物語の洗練度込みでジャッジメントするからな、」
『よかでしょう』
言語設定を九州弁にもーどおんして着ぐるみが返した。
ひとりと一匹はこたつを挟んで睨み合い、――ジャンケンホイッ! 三回続いたあいこの末、勝利した着ぐるみは後攻を取った。
「――ではいくぞ、」
先攻のロンゲがキリリと眉を引き締めた。
「ネギを値切るっ!」
気合十分、ロンゲが吠えた。
『……。』
――まぁ一発目としては妥当なセンですな、着ぐるみは胸の前に短い腕を組んで目を閉じた。この遊戯の醍醐味はダジャレがつまらなくても添付ストーリーが面白ければ高評価、もちろんその逆もありうるわけで、バランスを取るかインパクト勝負か、その組み合わせ、コントラスト微調整も腕の見せ所である。
ロンゲの口からサイドストーリーが語られ始めた。
「……ホラ俺ん家はさ、そんなに金はないけど地元じゃわりと名士で通ってるわけよ、何つーかな、そーゆーな、人柄と自負と信頼だけで成り立ってた地位だからさ、そこん家の息子の俺が八百屋でネギを値切ってたって、――やぁっだ木圭さんとこそんなに生活困ってたのかしらぁ〜って、そこで幻滅されて愛想尽かされるか、いいんですよぉ、ネギの一本や二本、どんどん持って行って下さいよ! 思わぬ人の優しさに触れられるか、ただのドケチともビンボーとも違う、一世一代、イチかバチかの大博打、って悲壮感背負ったニュアンスをぜひとも汲み取ってもらいたいわけさっ」
『……。』
着ぐるみがしばし考え込む。出された判定は『C+』(ちなみにA〜Eの五段階に各+−がつく場合の計15ランクシステム)。
「え〜そんなモンか〜?」
もう少し上が狙えるものとロンゲは思っていたらしいが、相手がつけた評定には無条件で従わねばならない、それもこの紳士的な遊戯のルールである。
さて、着ぐるみの順が回ってきた。頭上にさっと掲げたプラカードには、
『シカをシカトする』
「何ィィィッッ!!!」
こたつを叩いて浮き足立ったロンゲの瞳の色が変わった。拳を握り、唇を戦慄かせながらロンゲは呻いた、
「“シカをシカトする”だと?! 哀しいダジャレだぞっ、なのに“シカにシカトされる”じゃなくて敢えて自らシカをシカト……、俺には解せんっ、どーゆーロジックだっ?!」
恐慌するロンゲを置いて着ぐるみは延々連ねたプラカードに小話を述べ始めた。
『……今日もまた地球上からひとつの種が消えた。今日青々と萌ゆる緑の森は明日には丸裸にされるだろう。止まらぬ環境破壊、国境紛争、宗教弾圧、巻き込まれてゆく負の連鎖、旱魃、子供たちの嘆き声、――なぜ、どうして私はこの世に生を受け、何のため生まれてきたのか、あまりに無力でちっぽけな自分、悩み考え悶え苦しみ、それでもなお答えは出ない。行き詰まった私は神に救いを求めた、そして訪れたとある神社の鎮守の森、遭遇した一頭の雄鹿がじっと私を見つめてきたのだ、もの言わぬ瞳に彼は訴えかける、――そんなにお前は私に救って欲しいのかい、辛いのは、苦しいのはお前だけではないんだよ、……そう、その瞬間さ、私は己の迷いから目が覚めたのだ、己の甘さを恥じたのだ、だから私は高らかに宣言しよう、神よ、敢えてあなたの使いのシカをシカトするのだと!』
「Cだな」
判定札を上げてロンゲが言った。
『ええ〜〜〜!!!』
すっかり語りに入り込んでいた着ぐるみは納得できなかった。どうにも頭から冷や水を浴びせられた気分だ、羽織の腕を組んでロンゲが言った。
「何つーか、ダジャレのインパクトに比べて全体に印象が散漫なんだよなー、根本が怒りなのか哀しみなのか前向きな決意なのか、第一導入が陳腐すぎないか?」
『……。』
自分でもネックだと思っていた部分を突かれたので、着ぐるみはしょんぼり肩を落とした。
再びロンゲの順番である。今度はさらりとロンゲが言った。
「みかんがみっかんない」
『……。』
ダジャレの種類としては極めてシンプルかつオーソドックスのラインである。――さてさてここからどう出るか、着ぐるみはロンゲの次の言葉を待った。
「今回はみかんの気持ちに寄せてみたんだ、」
前置きした上でロンゲが語り始めた、