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CROSS 第13話 『帰投』

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第4章 エアリアルダウン



 上社は犬走椛をなだめながら、窓の外から様子を見ていた。山口
と、この犬走椛と同じ世界の住民である妖夢が無事であることを確
認すると、それを犬走椛に教えた。
『シールド、ダウンしました』
そのとき、機内にそんなコンピューター音声が流れた。機内にいた
全員が「え?」という表情をしていた。シールドがエネルギー不足
で切れてしまったのだった……。

   バァァァン!!!!!!

 そして、次の瞬間、機内に一発のトゲが、貫通して飛びこんでき
た。二人の隊員が、そのトゲに突き刺さって死んだ……。その血が
盛大に飛び散り、上社や犬走椛にもかかった。
「きゃあ〜!!!」
犬走椛が自分にかかった血や死体を見て叫んだ。
『航行不能です』
静かなコンピューター音声とともに、2号機のエアリアルはバラン
スを崩す形で地面へと落下していった。
「落下の衝撃に備えろ!!!」
上社はそう機内にいた全員に叫ぶと、シートベルトを確認して衝撃
に備えた。犬走椛は頭を下げた。何人かの隊員が急いでシートベル
トを装着し始めていた。

   ガシャーーーン!!!!!!

 金属が大きくきしむ音とともに、エアリアルは地面に墜落した。
幸い、爆発炎上はしていないが、両側のエンジンなどから黒煙が上
がっていることから、いつ爆発してもおかしくなかった。割れた窓
から、煙が入り込んできた。
 機内は、先ほど串刺しになって死んだ死体や、シートベルトの装
着が間に合わずに墜落の衝撃で死んだ死体が転がっていた。生き残
った隊員たちは、ゆっくりと状況を確認し始めた。しかし、窓の外
は黒煙に覆われており、外の様子はよくわからなかった。ただ、少
佐たちがいるところより離れた場所に墜落してしまったのはわかっ
た。一刻も早く、ここから出て、山口たちの元に行かなければなら
ない。まず有り得ないことだろうが、置いてきぼりになってしまう
かもしれないからだ。

 上社は帽子を床に落とした程度で、奇跡的にケガ一つ無かった。
きちんとシートベルトを装着していたからだった。
しかし、
「いたた……」
上社の左で犬走椛が、頭にできた切傷を押さえていた。額に血が流
れていた。犬走椛もシートベルトを装着していたが、落下の衝撃で
割れた窓ガラスの破片で、額を切ったのだった。上社は心配そうに、
「大丈夫? おい、衛生兵!!!」
上社はさっきまで近くにいた衛生兵を呼んだ。
 しかし、衛生兵は向かい側の座席の上で、体を変な方向にねじ曲
げて死んでいた……。シートベルトの装着が間に合わなかったらし
い……。この2号機にいた衛生兵は、このねじれ人間だけだった…
…。負傷兵が痛そうに声を上げていた。焦る上社に犬走椛はニコリ
と笑って、
「私は人間じゃないですから、こんな傷ぐらいすぐに治りますよ!」
犬走椛はそう元気そうに言ったが、上社は心配そうにしていた。

   ガキィーーーン!!!!!!

 そのとき、機内にハッチのドアを何か固い物で叩く音がした……。
「仲間が助けに来てくれたんだ!!!」
叩く音は続いており、だんだんハッチの鋼鉄製のドアが変形してい
た……。ハッチは外側に向かって開くはずなのだが、このときはな
ぜか、内側に向かって開かれようとしていた……。