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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 ◆四 混沌
  
 16CC本社は恵比寿駅から渋谷方向に歩いて十五分ほどのところにあった。
 大通りから一歩裏に入った七階建てのオフィスビル。その一階部分が16CC本社。
 もとは目黒にあったものが、ゲーム部門の増設を機に、グループ企業の頂点となるNRTの本社ビル近くに移って来た……ということらしい。そのあたりの情報は大井弘子のライター仲間によるものであるのだが……。
 「ふーん……」
 約束の時間。約束の場所。
 学校帰りに会社にまでやってきた小娘は口をへの字に結んで、それから言った。
 「外からじゃ、そんな会社があるとは分からんね」
 恵比寿駅で落ち合った姉は黙っている。
 オフィスビルにはそれらしい表示はない。ただ。
 ビルの入り口から不意に二人連れの男が出てくる。血色の良くない二十代の男。あまり人相がよくない二人連れ。そろってジーンズにTシャツというラフなスタイル。一人は金髪にピアス。もう一人は腕に刺青。タトゥー……とは丸山花世は絶対に言わない。刺青。言葉を綺麗にすれば実態が美化される事などないのだ。男が腕に入れているのは単なる『刺青』。
 「……スタジオは押さえてあっから」
 「そう?」
 男達の会話は案外まともであるが……だが、やはりカタギの人間ではないのだ。
 男達は歩み去り、そして丸山花世は言った。
 「チンピラの巣窟か……」
 「そうね」
 大井弘子は頷いた。
 そして。オフィスに入ろうとした姉妹の足が動きかけてまた止まった。16CCの人間だろう、別の社員がよろよろと夏の熱波の中に這いずり出てきたのだ。
 「……」
 眼鏡をかけた太り気味の男。顔色の悪い男は夏の太陽に目をしばたたかせて、そのままふらふらとどこかに歩いていった。
 「アネキ……」
 丸山花世は姉に呼びかけた。
 キンダー系とサイゴン系。ゲーム系は二系統に別れていがみ合っている。で、そのことはすでに妹は姉に報告済み。だが……。
 「ゲーム部門とレコード部門も……明らかに分裂してるよね」
 「そうね」
 どうしても合わない相手、どうしても耐えられないカラーというものがある。同じクリエイターでも、まんまヤクザという感じのレコード部門の人間と、オタク上がりのゲーム部門の人間では多分話はあわないし、もともと会話もないか。