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コンビニへ行こう! 前編

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take5 追跡者のため息





どうやら、折原臨也と言うのは外道な情報屋らしい。
っていうか、情報屋って何。
正臣が、コンビニで見かけた時とは印象が違いすぎてわからなかった!と言いつつも教えてくれたことによると、本当の本当に外道で最低な人らしい。
帝人は昨日一日かけて正臣が教えてくれたいろんな噂話について考察しつつ、どうしても自分の知っている「折原臨也」と、その噂の臨也が重ならなくて首を傾げる。
だってあんなコミュニケーションに難がある人が、どうやってそんな信者とか作るっていうんだ。絶対に嘘だろう。出鱈目すぎて途中から聞き流してしまった帝人だが、とりあえず、昨日平和島静雄と言う自販機をぶん投げちゃう人に追いかけられていたのが臨也だということだけは、理解している。
怪我しなかったかな、と心配しながら電話をかけてみれば、電源が入っていないしメールにも返事が無い。一体どういうことだ。
日曜日の午後、ごろごろと布団に転がりながらむーっと携帯の画面を睨みつけていると、ようやく臨也の携帯からメールを受信した。
「あ、よかった」
メールを送れるということは、とりあえず無事らしい。
ほっとしてメールを開けば、そこにはこんな文字列があった。


『臨也の家はここよ。訪ねたければ訪ねればいいわ』


そして、何かのURL。
「……え、臨也さんじゃないの?」
明らかに女性の文体である。疑問に思いつつも、帝人はそのURLをクリックしてみた。新宿の一角、どこかのマンションまでの地図であるらしい。
どうして臨也以外の誰かが臨也の家を教えてくれるのだろうか、その点は大いに疑問なのだが、顔だけはいいんだし、彼女くらい居てもおかしくない……のだろうか?もしくは家族、身内が見かねて……とか。うんありえる、そっちのほうがありえる。お母さんとかかな。
「新宿かあ、行ったことないなあ」
さてどうしようか。ばふっと枕に顔をうずめて、帝人は少し考えた。確かに怪我とか気になることは多いが、都会慣れしていない自分が新宿という池袋よりさらに大都会の魔境に踏み込んで、無事で帰ってこられるだろうか。とても不安だ。
だがしかし、これが本当に臨也の母親あたりからのメールだとしたら、臨也は精神的に酷い状態であると予測される。何しろ昨日目が合った瞬間、泣きそうな顔をしたことを忘れていない。
「……行くか」
なんかとっても、帝人が慰めてあげなきゃいけないような気がする。ひしひしと。
帝人の脳内では、ニートひきこもりの臨也が家族に嬉々としてたった一人のお友達(帝人)について語る食卓の様子や、その友達にかっこ悪いところを見られたと落ち込む様子、そんな息子を案じて母親がなれないメールを一生懸命打っている様子などが一通り上映された。
実際は「帝人君に尾行がばれた!シズちゃんの馬鹿!今後について考えるから今日休み!」と通達された波江が、全く面倒だわねと思いつつ、事務所の机の上に忘れ去られていた携帯でメールを送っただけなのだけれども。
そんなことなど知らない臨也の元へ、帝人はちゃっちゃと出かける用意を整えて、我が家を後にするのであった。



「いざ!初新宿!」



結構、楽しそうに。




ピンポーン、とインターホンが鳴ったとき、折原臨也はソファーに座って膝を抱え、どうしようどうしようとぐるぐると考えていた。
何が最悪って、静雄との追いかけっこを見られたことが最悪だ。
二人の追いかけっこはそこそこ知名度がある。帝人がちょっと調べれば、すぐに折原臨也という極悪非道の情報屋の存在が帝人の知るところとなってしまう。せっかく悪くない印象を持ってもらっていたのに、これは痛い、痛すぎる。
ああああもう!こんなことならあんまり悪いことするんじゃなかった!
激しく今更なことを思い、涙目になりつつどう言い訳しようかと考えていた臨也は、来客を知らせるチャイムの音にはっと我に返った。
「……無視」
今、それどころじゃないし!
それより帝人君だ!
きれいさっぱり来客を無視してうだうだと再び思考回路の迷宮に沈み込もうとした臨也だが、インターホンは二度目、三度目のチャイムを鳴らし、しつこく存在を主張する。徹底的に無視を決め込もうとしたけれど、五回目あたりで流石に無視をあきらめるしかなかった。
「ああもう!」
なんだよ!とイラつきながら、足音をたてて玄関に向かい、ドアの向こうを映すボタンを押した。
「はい、折原!」
しかし、臨也はその直後、見事に硬直した。
『遅いですよ臨也さん』
くすくすとドアの向こうで笑っているのは。
紛れもなく。
見間違うはずもなく。
「み、帝人君!?」
そんな馬鹿な!
幻か!だってこの家を教えたことなんか、一度も!
「え、ちょ、ま。ままままっ」
自分でもちょっとどもりすぎだろうと思うほどに舌が回らない。慌ててロックを外して急いでドアを開ければ、斜め掛けのカバンを下げた帝人がこんにちは、とにっこり笑った。
「こ、んにち、は」
ああちくしょう、本当になんでこの子はこんなに可愛いんだろうね!そんなどうしようもないことに、文句をつけるくらいには臨也は動揺している。
「ど、どうしてここ、え、何、エスパーなの!?」
「メールで教えてもらったんですけど」
「誰に!?ま、魔法使い!?」
「えーと、臨也さんの携帯から、こんなメールが届いて」
はい、と突き出されたメールの内容は、まあ想定の範囲内の内容で、波江以外にいない。
「何だ、魔女か……」
この協力は高くつきそうだ。いや、現時点でかなりの借りがあるのだけれども。
「魔女って、だめですよ臨也さん、母親をそんな悪く言っちゃ」
「ちょっと怖いこと言わないでお願いだから!波江は、母親じゃなくってなんていうか……助手!仕事の助手だから!」
「はいはい」
「信じる気ゼロ!?」
どうやら帝人の中では、臨也を心配した母親が送ったメールということにされているらしい。なんて想像力豊かなんだ。
「え、えっと、上がる?コーヒーか紅茶か緑茶か牛乳なら出せるんだけど」
「いいんですか?お邪魔じゃないなら……ちょっと、言いたいことも有りますし」
「どうぞ!」
信じられるだろうか。先日帝人の家におじゃまして手料理をごちそうになったと思ったら、今日は自分の家に帝人がいるというこの奇跡。臨也は舞い上がりながら帝人をリビングに通し、リクエスト通りに緑茶をいれてお茶菓子のクッキーを差し出した。
ぎくしゃくとぎこちない動きで向かい側に座った臨也を見据え、帝人はちらりとその額に目をやる。
「臨也さん、その怪我は?」
「え!?」
いきなり本題、きたこれ。
平和島静雄にやられました、なんて、正直に答える事はできない。臨也は帝人から目をそらしつつ、「あー」と意味のない声を出して、苦しい言い訳をひねり出す。
「ね、猫とか、ほら。野良猫って強いよね!」
「昨日、池袋にいましたよね?」
「いやそれはほら、あの、ね?」
「臨也さん?」
ごまかすな。
まっすぐに見据えられて、おそらくはそういう意味で睨まれた。臨也は早々にごまかすことを諦める。帝人相手にいつもの言葉の羅列が出てこないことは、これまでの経験からもよく分かっていることだし。
「すぐに治るから大丈夫」
作品名:コンビニへ行こう! 前編 作家名:夏野