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コンビニへ行こう! 前編

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第二部:take1 友人の定義


ストローさん、こと折原臨也と友達になって数週間が過ぎた。
相変わらず言動は面白い。
帝人はいつも通りにタバコの補充をしながら、その補充が終わるのを今か今かと待ちわびて雑誌コーナーでそわそわしている臨也をちらりと見た。落ち着き無く車雑誌など立ち読みしているふりをしているけれど、そもそも、立ち読みを装うならせめて雑誌は正しい方向で持って欲しい。さかさまですから、それ。
よく売れるメジャーなタバコを補充し終わると、レジに戻ってレジ袋の整理に移る。それを見計らっていたかのように、臨也はさかさまに読んでいた雑誌をそのままさかさまに棚に戻して、ぴゃっとプリンの並ぶ棚へ移動するのだった。
悩むでもなくプリンを手に取り、嬉しそうに帝人の待つレジへ駆け寄ってくるその様子は、何度見ても子供のようで微笑ましい。
「お、おはよう帝人君!」
「おはようございます、臨也さん」
相変わらずプリンにはストローがつくわけだが、まあそんなことはどうでもよくなってきた。今日はイチゴプリンかあ、と和みつつお会計を済ませる。
「そういえば、だんだん気温も高くなってきますけど、コートって暑くないんですか?」
「え?ああ、うん、これ夏用だから!早いけど出しちゃった!」
「夏用?」
「うん、俺これ気に入ってるんだよね……あれ、もしかして、似合わない……?」
「い、いえいえ!お似合いです!」
 変 な 人 だ 。
いやもう、今更だけど。この間も誘われて一緒にご飯を食べたのだが、携帯電話をコートの内側に十二台持ち歩いていると聞いてドン引きした帝人である。
もちろん、顔には出さない。接客で培った技術。
だがしかし、そんなとんでもエピソードが増えるたび、「ああ、この人だから友達いないんだな……」と納得せざるを得ないのだった。
携帯十二台って。ネトゲ用と会話用とメール用とSNS用と……って全部分けているんだろうか。面倒くさいことするなあ。
実際は情報屋としての仕事用なわけだけれども、そんなことが帝人の知らない世界なので、単純に臨也=ひきこもりの図式を確定している帝人にはそういう風にしか思えない。
勝手にヘビーネットゲーマーにされているとは思わない臨也は、携帯電話をたくさん持っていることをアピールしていつでも電話ウェルカム!を主張したつもりなのだが。ポイントずれまくりだ。
「今日も待ってて大丈夫、かな?」
おずおずと切り出す臨也は、友達いない宣言をしたその日以降、帝人の仕事が終わる九時近くに出没するようになった。
「あ、はい、大丈夫ですよ。何食べに行きますか?」
「なんでもいいよ!君が食べたいもので!」
「じゃあ、あと五分待っててください」
「う、うん!」
そろそろゴミ捨てに行って終わりの時間だ。待てと言われた臨也は大きく頷いて、店の外でいつも大人しくジュースを飲みつつ待っているのだった。
臨也と一緒に食事するのは、嫌いじゃない。
ぎこちなさが日に日に普通に近づいているのを見ると、成長しているなあと嬉しくなるし、奢ってもらえるし、相変わらずアイスに醤油をかけて凹んだりしている姿は面白いし、奢ってもらえる。いや、決して奢ってもらえることが一番の理由なわけではないけれど、でも奢ってもらえるって最高!
鼻歌でも歌いそうな様子で、帝人はバックヤードで昼のアルバイトと入れ違いに制服を脱ぎ、割り振られたロッカーで上着を変えるだけの着替えを済ませる。ちなみに、スペースがないので二人で一つのロッカーを使うことになっていて、帝人は正臣と同じロッカーを使用している。
「ねえねえ、竜ヶ峰君」
一歩遅れてやってきた女子大生が、そのときふと帝人に声をかけた。
いつも土曜日の朝一緒になる人なのだが、よく正臣をたぶらかしてシフトを変えてもらっている人でもある。清楚そうな外見に似合わず計算高い人だと分かっているので、帝人はいつも彼女と話すときは少し緊張する。
「あ、お疲れ様でした」
「お疲れさまー。ねえ、最近いつもなんか真っ黒の美青年と一緒に帰ってるよね?あの人誰?竜ヶ峰君のお兄さんとか?」
興味津々の顔で尋ねられたのは、どうやら臨也のことらしい。
「えー、っと、友達?」
「疑問系なの?えー、どういう関係?」
「友達です、多分」
「だからなんで多分なのよぉ」
何でといわれても。
帝人は自分と臨也の関係について、それ以外になんと表記すればいいのか分からずに首を傾げる。友達になって欲しいといわれたのだから、友達のはずだ。もしかして臨也にとっては唯一の、という形容詞がつくかもしれないが。
「えっと、なんだろう。一緒にご飯食べたりメールしたり電話したりする相手なんですけど」
「えー?でも年齢離れてるよね?うん、まあいいか。それよりさ、私に紹介してくれないかなぁ、彼」
ふふっ、と意味ありげに笑う女性の表情を見て、いくら鈍い帝人でも察しがつく。
狙っている、のだろう。そういえば臨也さん、顔だけみればかっこいいもんなあ、と帝人は臨也の顔を脳裏に思い描いた。顔だけ見れば。大事なことなので二回言いました。
いくらあの顔でも、プリンにストローを付けさせる変人だったら意味が無いと思う。ミステリアスってレベルの話じゃない。
「あれ?彼氏居るっていってませんでしたっけ?」
「それはそれ、これはこれ。別に付き合おうって言うわけじゃないし、友達になるくらいいいじゃない」
「あー、友達、ですか」
……今の状態で?
帝人は思った。無理無理、それは無理、まだ無理。だってまだ目を合わせて会話できないのに、そんなコミュニケーション能力でいきなり女子大生と友達は、さすがに。
それに、こういう計算高い女性をあまり紹介したくないな、と帝人は思う。何しろちょっと褒めただけで真っ赤になってしまうほどの純情青年なのだから、あっさりと手玉に取られそうで。
臨也に友達が増えることには賛成だけど、その相手は僕が慎重に選んであげなきゃ、なんて義務感も、芽生えてきちゃっているし。
「ちょっとあの人は、難しいですよ?」
帝人ははぐらかすようにそう返した。臨也本人の、会話しようとする努力は認めるが、どう考えても今の臨也に彼女を紹介できない。
それにネットゲーマーだし引きこもりだし半分思考回路が二次元だし。電話してると三割は意味不明な言語だし!
「えーっ、なんで!私には紹介できないって言うの?」
断られるとは思ってなかったようで、女性がずいっと帝人に詰め寄る。が、やっぱり無理なものは無理だ。
「それはあの人のほうの問題で、なんていうか、あの人……」
「何よ!?」
「人見知りですし」
「は?」
「すごい口下手で」
「……え?」
「おまけに挙動不審なんです」
深々とため息をつきながら答えた帝人に、女子大生はしばらく沈黙した。
「……残念なイケメン?」
「ビンゴ」
「わかった、じゃあいいわ」
なあんだ、とあっさり離れていくその切替の速さ、さすが強かだ。
残念なイケメン。
うわあ、なんて臨也さんにぴったりな言葉だろうか!
作品名:コンビニへ行こう! 前編 作家名:夏野