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手料理

いつものごとくルックが石板前に立っていると、英雄様がふらふらとやってきた。

「やあルック。君にいいものを持ってきた。」
「・・・それは・・・まさか・・・」
「？まさか？何？もちろん、スープだよ。」
「いらない。」

ルックは少し青くなってフイ、と顔をそらせた。

「なんで？まだ何も言ってないじゃない。」

英雄様・・・そう、リュカはコテン、と愛らしい顔を傾けて言った。

「じゃあそのまま何も言わず去れ。もしくは消えろ。」
「どっちも同じ意味でしょ。いつになく酷いね、ルック。せっかく僕が作ったのに。」

やっぱり！！ルックはなおさら青くなった顔でジロリとリュカを見た。

「君が作ったからこそ、だろ？君の腕は最悪だ。ナナミ料理に匹敵する。」
「ひどいなー、でも僕の料理の腕が酷い事くらい自分でも自覚してるよ。だから今ねハイ・ヨーに習ってるの。これはね、ちょっとした試作品。」
「試作品ってなんだよ！？いらない。ムリ。断る。」
「なんでそんなに嫌がるんだ？」
「・・・なんで、だと？前の戦いの時の事、忘れたの？君になかば強引に食べさせられて危うくそのソウルイーターの餌食になりかねた僕の事を！！」
「ああーそいやそんな事、あったね？」

忘れてたっていうのかーっこのやろう！！

ものすごい勢いで睨みつけるルックをものともせず、リュカはまあまあ、とにっこりしながらお皿をルックの前に差し出した。

「だからいらないって言ってるだろ！？君こそなんでそんなに食べさせたがるんだよ！？てゆうかなぜこんな鮮やかな緑色をしてるわけ・・・？」

青い顔色のままルックが言うと、リュカは可愛らしくもじもじとしながら言った。

「え？ああ、だって作ったら誰かに食べてもらいたいでしょ？ああ、色はね、ちょっとね、植物？なんか入れてみた。」

そんな風にしても内容が内容だけに可愛くないんだよ！！てゆうか・・・植物・・・しかも疑問形・・・？
このリュカがまともな食物を入れるとは思えない。
本人は悪気０でとんでもないものを入れてみる・・・なお悪い。

・・・緑色で・・・植物ちっく・・・


・・・ひいらぎこぞうとか言わないよね・・・？


お皿を目の前にして固まっているルックとニッコリと差し出しているリュカのもとに今度は軍主様登場。

「なにしてるんですか？なんとも妙な構図なんですが・・・て何そのお皿？」

ルックはこれ幸いと口を開いた。

「リュカの手作り料理。」

そう言えばこのおバカの事だ、後先考えずにこれを奪い取ってでも飲むだろう。これでなんとか僕は飲まずにすみそう。
それにユキナはナナミで慣れているはず。きっと倒れても大事はあるまい・・・ルックの勝手な決め付け。
そしてユキナはあまりにも予想通りな反応を示した。

「まじでか！？ちょ、それ、俺に下さい！！俺、ほしいです！！」
「え。でも君はここの軍主だし・・・具合悪くなっちゃったら・・・」

って、僕ならいいんかぃ！！

ルックは思わず心で突っ込んだ。てゆうかあきらかに具合悪くなるかもって分かってるって事だよね？

「なんでこの俺がマクドールさんの手料理食べて具合悪くなるんですかー、ありえないです。てことで、いただきます。」

ユキナはリュカが何も言う間もあたえず、その皿をかっさらい、スプーンですくって一口飲んだ。

「「あ。」」

リュカとルックの声が重なる。

「・・・。」

普通ならもう倒れてもおかしくなさそうだが、とルックは首をかしげた。
ユキナは妙な顔をしてはいるものの、しっかりと立ったままである。

「えーと、マクドールさん。これ、何入れました？」
「えーと・・・。・・・・・・ひいらぎこぞう・・・。」
やはり・・・。ルックは少し遠い目でリュカを見た。
てゆうか、先ほどの反応といい、今の小さくなってる声といい、あきらかに入れてはまずいものを入れたという事くらいは分かってるってことだよね！？
ほんとに悪気、ないのか・・・？
しかもまたもやそんなものを僕に食べさせようとしたな！？

「あーやっぱり。だめですよー。」
「そうだよ、何考えてるんだよ。」
「ひいらぎこぞうはしっかりアクを抜いて表面の皮をとったうえで使わないと、普通の人だと倒れちゃいますよ？」
「って、そっち！？てゆうかなぜ料理法を知ってる！？」

もはや心の中だけの突っ込みで終わらせられなかったルックは思わずユキナに突っ込んだ。
リュカは感心したように言った。

「へーそうなんだ。ユキくん、料理詳しいんだね。」
「まあね、昔から料理はせざるをえない環境だったものでー。あとはナナミが色々挑戦してくれるおかげで詳しくなりました。」

テヘ、とユキナは可愛らしいと言っても過言じゃない笑みをうかべてサラリと答えた。
ルックはひそかにユキナに同情した。

「それに今もはよく料理大会はひらいてますしね、今度もまたやるんで、良かったらマクドールさんも参加してみますか？」
「え、いいの？」
「だっだめだ！！」

ぱぁぁと顔をほころばせたリュカをしりめに、ルックが青くなって止める。

「「なんで」」
「あたりまえだろう？君も今これ飲んで分かってるだろ？リュカはナナミ料理に匹敵するんだからね。戦争してるってのにわざわざ人出不足にするバカがどこにいるんだよ。」

リュカはそれを聞いてシュンとした。

「えー、なんでもマズイのくせに何言ってんだよ。でもうーん、実際倒れる人が続出しちゃったら確かに困るな・・・。リュカさんて、料理、作ったりふるまったりするの好きなんですか？」
「え？うん。割と。作るのは実験みたいで楽しいから。それに作ったものは誰かに食べてもらいたいもんでしょ？」

またもや可愛らしく言う様子に、ユキナはノックアウトされている様子だが、ルックは遠い目になりながら思っていた。

てゆうかまさに実験してるだろ・・・？

「じゃあ、まあ２人の意見を考慮して、今後はなんか作ったらいつだって俺が食べますよ。ね？」
「いいの！？」

頼もしいユキナの言葉に、リュカはすごく嬉しそうにした。
ある意味、すごくお似合いだと思うよ・・・ルックは生温かい目でそんな２人を見守った。