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律姫 -ritsuki-
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夢見る明日より 確かないまを

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2 玉響のきらめき





「新入生の皆さん。董城高校への入学、おめでとうございます」

入学式での生徒会長の挨拶を遠くに聞きながら、二人は体育館に立っていた。

松下 司
岡本 孝志

都内でも屈指の男子校、董城高校へ入学。



「フェンシングをやってみたいからです」
中学校の担任の先生にはそう告げて、董城を受けることを無理やり納得させた。
『階星学園を受験しろ、お前なら絶対に受かるから。それか国立を受けてみるのもいいぞ』
有名私立や国立を勧められたけれど、せめてあと3年は一緒にいたかったから断った。
この3年間でも想いが届かなかったら、もうあきらめようという決意さえ抱いて。

その覚悟で、董城に入った。
ここだってそんなに悪い学校なわけじゃない。
むしろ中学校から二人も董城が出たなんていったら結構すごい。
国立大学への進学率も高いし、校風はそこそこ自由。
・・・そしてここは、柔道が強い。

「俺は柔道を続けたいから董城高校を受験する」
中3の夏に孝志がそう言った。

そのときの司はまだ進路のことは何も決めてなくて、勧められるまま階星学園へ行くのもいいかと思ってたところ。孝志にも、一緒に階星学園を受けようと誘ってみようかと考えていた。
けれども、董城高校の名前が出たことで、階星を一緒に受けようと誘うことはできなくなってしまった。

そうなると、いきなり目標をみうしなう。
このまま、階星に行くか・・・?
孝志が一緒じゃないとなると、なんだかそれがいきなり億劫に思えた。

そして行き着いた結論はもっとも単純。
結局、孝志と一緒じゃないと何もやる気がしないんだってこと。

そうして、先生方の反対を押し切って董城高校を受験。
二人でおそろいの、合格通知。


司が董城高校に入ったことは、孝志にとっては少し複雑だった。
階星を受けろといわれ続けて、国立も受かるかもしれないなんていわれてた司。
2ランクばかり学力のレベルが落ちる董城に入るなんて、周りにとっては意外なことこの上なかっただろうと思う。
自惚れるわけではないけれど、夏に董城を受ける、と司に告げたことが原因かもしれないと思う。
そのとき、司は何も決めてないみたいだった。だから、夏にそれを告げたことは、一緒に董城に行こう、という誘いの意味がなかったわけじゃない。
一緒に来て欲しいという思いが確かにあった。
何も決めてない司にそういえば、一緒に受けてくれるんじゃないかって。

・・・その予想ははずれなかった。

それでも、今更になって考える。
司の優秀さを存分に生かせるのは階星や国立だったんじゃないかって。

でも、もしそれを言ったら、董城を受けるのをやめてしまうんじゃないかと思って、入学式の日までずっと言えなかった。

「司・・・本当に良かったのか?」

つぶやくように言ったその質問は司の耳には届かないようだった。