小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

夢見る明日より 確かないまを

INDEX|34ページ/43ページ|

次のページ前のページ
 

4 永久に焦がれる面影




糸が絡んだままの約1年。
良くも悪くも変化のないままの一年。

そして迎えた、入学2年目の5月。
2度目の生徒会総選挙。
新たに生徒会室に迎えられることとなった一年生は、定員には1名満たない2人。

「あの、生徒会役員って成績よくなきゃいけないって、選挙の後にきいたんですけど・・・」
開口1番にそう言ったのは、大人しそうな風貌のほう。男の子の日本人形みたいな容姿をしている。
「え、マジで!?俺それ知らんかった」
横から、ついうっかりといった形で口を出したのは、1年生ながらに長身で、一目で運動部と判断がつくような褐色の肌をした方。
「あの、もしご期待に添えなかったら・・・」
「絶対無理です、すみません!」
生徒会室でお門違いな事実に青ざめている二人に、生徒会長と元生徒会長は笑いをかみ殺していた。

「なるほど。やけに立候補者が少ないと思ったら・・・」
納得顔で頷くのは新しい副会長。
こんなプレッシャーのかかる噂が囁かれていたのでは、立候補者がすくないことも頷ける。特に歴代生徒会長が常に学年で首位をキープしているのであれば、その噂はさぞ信憑性がたかかったことだろう。
「なんか1年前が懐かしいよな、松下も岡本もすっかり成績優秀者だもんな」
「最初にあれだけ鍛えられれば、成績優秀者にもなりますよ」
「だろうな。あのころは俺も必死だったからなあ」

青ざめる1年生を差し置いて、上級生の3人は暢気なもの。
「行田先輩、どうなんですか。今年も1年生は成績優秀者にするんですか?」
1年生のことを心配してそう言い出したのは孝志。選挙後からは副会長の役職につくこととなった。
「それは松下が決めることだろ。俺はもう生徒会とは何も関係ないからな」
「そんな寂しいこといわないでくださいよ。一応上皇様の意見も聞いておくことにします」
「それじゃあ、お言葉通り、現皇帝様にご意見申し上げることにしようか」
二人の掛け合いに笑うこともなく、新入生が審判を待つような顔をしている。
「新入生は、生徒会の仕事をしつつ、それぞれの得意分野で頑張ってもらえば良し。それが俺の意見」
「なんか俺らのときより甘くないですか?」
堂々とそれを言ったのは司。
「俺にとって1年生は孫みたいなもんだからな。俺は甘やかすから、お前らは親としてしっかり厳しく教育しろよ」
それを言い放ち、楽しそうに行田が笑みをうかべる。
一方で、その言葉を受けた二人の親は苦笑いである。
「どうする?」
「それは、生徒会長が決めることだろ」
副会長の言葉を受けて、司がしばらくの思案顔。
「よし、決めた。それじゃあ2人は中間テストくらいまでには何か誇れるようになるものをみつけること。得意教科でもスポーツでもなんでもいいよ。これでどう?」
問いかける先は1年生。
「えっと、得意教科作るって事でいいんですか?」
「俺、水泳ならめっちゃ自信あります!」
さっきまで青ざめていた顔が、ぱっと変わった。
どうやら、それなら希望があるらしい。
「あ、あと中間テストで数学の成績が良かったほうが会計ってことで。中間テストが終るまでは、会計と庶務の仕事を孝志から教えてもらって両方を覚えるように」

その言葉で、第一回選挙後の生徒会定例会は終了し、1年生を帰した後には、すでに下校時間が目前に迫っていた。
「俺は部活に行くよ」
立ち上がったのは孝志。
「え、今から?」
部活の終了時刻まではもう30分をきっている。
「今のところは溜まってる仕事もないからな。少しでも体動かさないと。それじゃ」
行田と司の二人だけを残して、生徒会室を出て行った。

「真面目だよな、相変わらず」
喉を鳴らして笑う行田。
「久しぶりに一緒に帰れると思ったのに残念だった?」
「別に。そんなことないですよ」
軽く笑いながら、嘘をつくことにすっかり慣れてしまったなと思う。
「岡本は、まだ気がついてないのか?」
「どうでしょうね。俺からは何も言ってないし、学年で俺らのことが噂になるようなこともなかったし、知らないんじゃないですか」
知らないでいて欲しいという司の希望もこの言葉の中には大いに混ざっている。

「・・・ま、いいけどな」
岡本孝志が、この関係を知らない、もしくは知らぬふりをしているということは行田にとっても好都合だから。