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CROSS 第7話 『動向』

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第3章 謁見



 ドアを開けると、貴賓室の真ん中にあるソファに、ピンク系の子供服に大きな赤いリボンがついている帽子の10歳ぐらいの少女が座っていた。その少女の髪の色は、水色系という山口たちの世界では珍しい色をしていた。背中からは、コウモリに似た羽が生えていた。
「お久しぶりです」
山口はただそれだけ少女に言った。少女は片手に紅茶が入ったティーカップを持っていた。そして、少女はあいてる方の手で向かいのソファを指さした。山口は、黙ってそのソファに腰を下ろした。
 少女は最初、山口を見ずに紅茶を飲んでいた。その場は静寂で満ちていて、気まずい空気が流れていた。その気まずい空気で、山口は落ち着きを失い始めていた……。何かしゃべろうと山口が口を開いた時、
「今日の新聞は読んだ?」
少女はぼそっと言った。突然の問いかけに山口はびくっとしたが、
「『文々。新聞』なら読んでいますが」
「なら話は早いわ」
そこで少女は山口はじっと見た。少女は話を続ける。
「うちの国の霊夢たちが、あなたを評議会の公聴会に出席するように
 言ってくるかもしれないけど、絶対に断るのよ!」
少女は強気な口調でそう言った。山口は窓の向こうのそのまた向こうにうっすらと映る異次元空間をチラリと見た後、
「で…でも、スカーレットさん! どうやって断わればいいんですか!? 変な対応をしたら、また経済制裁を喰らうんですよ!
 それに、」
「わめくな」
落ち着き無くしゃべる山口に、少女は静かに言った。山口は黙りこんだ……。
「あなた達『CROSS』には、少し遠いところに行ってもらうわ」
そこで山口は息を飲んだ。山口の肌に鳥肌が立った。
「同じ新聞に、『デモンズソウル』の世界に進軍していたあんたたちの軍隊が「私たちの世界のじゃない」悪魔たちの反撃にあったことが載っていたでしょう?」
少女のその言葉の続きが理解できた山口はたじろぎ始めた。
「そういえば、そんな記事もありましたね……。ハハッ」
「公聴会の会期が終わるまでその世界にいるのよ。重要な任務があるなら、あの子たちも手出しできないでしょうからね」
子供をたしなめるような口調で少女は言った。
「その世界って、『デモンズソウル』の世界にですか?」
「他にどこがあるっていうの? 月に「外来人部隊」として送りこまれてたい?」
「……い…いいえ」
「よろしい!」
そこで少女は、ニカッと笑った。
「……でも、我々は、今や1個中隊とちょっとの兵力しか残っていません! 全滅しちゃいますよ!」
山口は少し泣きだした。少女の顔から笑みが消え、真剣な顔つきになった。そして、静かな口調で、
「あなたはかつて、自分たちの世界で「革命」を起こしたほどじゃない。あのときの強気なあなたはどこにいったの?」
少女のその言葉に、山口は席から立ち上がった。彼は、もうあきらめたという表情をしていた。
「やればいいんでしょ、やれば!」
山口はそう言い切るとドアに向かった。
「安心しなさい、あなたの運命はいいものよ」
「それは心強い! 次にお会いするときには、CROSSはオレ一人になっているかもしれませんね!」
山口はそうイヤミったらしく言い残すと、貴賓室を出ていった……。