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人間屑シリーズ

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二日目



 銃殺!
 銃殺!!
 銃殺!!!

 なんてトキメク響きだろう。普通に生きていて、銃殺される事なんてあるだろうか! 少なくとも、俺の人生では有り得ない。そんなドラマチックで華々しい展開など、俺には決して手に入らないモノだった。
 しかし、今! 手に入ったのだ。殺害方法の希望を『銃殺』と伝えると、『了解しました』というメールが返ってきたではないか! なんというハッピー。こんな幸せ、高校の時に初めて告白された以来だ。

 高校の時までは、普通に友達もいた。割とクラスの中心的なグループに所属していた俺は、童貞である事が恥だと思っていた。
 だから、周囲には女子大生と付き合っていると吹聴していた。大学生のお姉様と週三ペースでアグレッシブなセックスに明け暮れ、「女子高生? 子供っしょ。やっぱ女は二十歳過ぎてからだろー」とか言っちゃってた。死ね、あの頃の俺よ、躊躇う事なく死ね。
 が、そんな俺が高校の後輩に告白された。マジで耳を疑ったね。あの日の事は一語一句記憶してる。


「先輩……の、事が……好き……なんです」
 決して可愛い子では無かった。点数でいったら四十点位の子。それでも俺は舞い上がった。もう一生この子を守ってこう! とか思ってた。だけど俺が返事する前に、当時つるんでたヤツが寄ってきちまったんだよ。
「あー、何? 愛の告白ってヤツー? ハハッ。でも、お前無理だわ。コイツ、毎日のように美人の大学生とヤリまくってんだぜー。お前、全然可愛くねぇし。身の程わきまえろー?」
「……っ! あ……。……はい。……すみません……」
 えー! 何言ってんのコイツーーーーー! って思ったよ、俺。全然可愛いよ! だってこんな俺に愛の告白してくれるような子だよ? もう釈由美子より可愛い(当時ファンだった)!
 だけどさ、さんざん「女子大生最高!」「カーセックスとかスリルたまんね」「クラスの女なんか皆ガキ」とか言ってた俺がだよ? 今更! 今更「女子高生もアリ。後輩もイイかもしんまい」とか言えるかよ。仮に言ったとしよう。もし、この子とセックスなんてしてみろ、童貞丸出しのセックスにこの子は何て思うだろう? そして、二人に別れが訪れた日には、同じ校内で一体どんな惨劇が起こるんだ!?
 
 ――あの日、俺は全力で自分のプライドを守った。
「俺、ガキには興味ねぇし」
 彼女は小さく息を飲むと、俺の前から走り去って行った。そんな彼女の後姿を見て、俺は心で号泣した。本当は全力でセックスしたかった。そこかよ? って感じかもしれないが、下らない見栄とプライドに支配された高校生の本音なんてそんなもんだろう?

 そしてそんな俺に天罰が下ったかのように以来、人と付き合うなどという機会は皆無だった。
 だが、いいのか? コレで。俺の人生、後六日だぞ? 一回位はセックスしてから死にたくないか?

 風俗! 泡姫!! ソーーープ!!!

 遅ればせながらの風俗デビューするか? しちゃうか?
 今までは病気が怖くて行けなかったとことんチキンな俺だが、六日後に死ぬんだから関係ないだろう。ある調査では二十三歳までに童貞を捨てれない男の、およそ七十%以上が一生童貞だという。危ねー。俺、もう無理だったよ。

 財布と携帯を握り締め、外出する決意をする。なぁに、六日後には死ぬんだ。それも華々しく銃殺されるのだ。何も怖くない。
 さぁ、出かけようぜ、俺!
 ――だが俺は次の瞬間、ほぼ無意識に携帯のアドレス帳を開いていた。
作品名:人間屑シリーズ 作家名:有馬音文