二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
みとなんこ@紺
みとなんこ@紺
novelistID. 6351
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

One-side game

INDEX|10ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

3.







一方その頃。



噂の錬金術師は道行く人がみな避けて通りそうなご面相で



道に迷っていた。



「〜〜〜〜かー!また行き止まりかよ…!」
ささくれ立った通りを進んだ先はまたしても民家の庭先で、通り抜けられるような道は見当たらない。エドワードは低く唸りながらも元来た道を駈けた。
人の大事な商売道具を攫っていった子供達を追って街に突撃したは良いが、普段のように柄の悪いオッサン連中なんかを相手にしているのとはまた訳が違う。自分以上にはしっこいのではないかと思われるスピードで、しかも向こうにとってはここはホームだし、土地勘がない分、分が悪い。
ちょこまかと街中を逃げ回る子供達を追って街中を走り回っているうちに、いつの間にか湖畔の方まで来てしまった。
立ち止まって振り返れば、すぐに先程降りてきた駅へと向かううねった坂。
たぶん、最初街は湖畔の近くだけだったんだろう。だが、徐々に人が増え、山の方へと無軌道に街を広げた結果がこの独特な入り組んだ街になったんだろう。山から湖畔までの傾斜はかなり急だ。街は坂道だらけで殆ど平らな道はない。普通に1階を歩いているつもりが、気が付けば3階にいたりと自分のいる場所すら判りづらかった。
トランクを置き引きしていった子供達はどうやら悪さをするので街の人たちに有名らしい。あちこちで人に行方を聞けば、足取りはすぐに掴めた。だが、肝心の追いかけっこが上手くいかない。
鬼は一人、子供は複数。
・・・これがふつーによくいる小悪党、みたいな奴だったら問答無用でぶっ飛ばすか、手を合わせて軽く一網打尽で済むのに。さすがに相手が相手なだけにあまり思い切った手段もとれず、ストレスは募る一方だ。
オマケに、
「こっちだよー!」
・・・さっきから、何かを勘違いされているような気がしてならないんだが気のせいだろうか。
「遊んでんじゃねーぞコラァ!」
すぐ近くに現れた子供達を怒鳴りつければ、怒ったー!と実に楽しそうに逃げられ。
・・・絶対何か勘違いされている。何だかもう、まず気力から萎えそうなんだけれど。
「ったく…」
子供達には悪びれた所がない。これはきっと本気で鬼ごっこと思われている。しかしこちらとしては切実なのだ。遊んでいる場合じゃない。はやくトランク取り戻して、イーストシティでアルフォンスと合流して、大佐から何かふんだくる。ここまでのコースが決まっているのに。
「早くイーストいかねぇと益々時間の無駄じゃねーか…」
「次のが昼の最後で、イーストシティ方面の汽車は夕方までないよ」
「は?」
独り言のつもりが答えが返ってきて、エドワードは背後を振り返った。
「お前、さっきの?」
不思議そうに首を傾げながら路地から声を掛けてきたのは、先程の駅でパンを買った少年だった。今度は街中で残りを売っているのか、同じように木箱を提げて。
「何でこんなトコにいるの?汽車止まっちゃったの?」
「あー・・・ちょっとな・・・」
何と言ったものか、と言い淀むエドワードに、子供は僅かに首を傾げた。
その時だ。
「やーい!」
・・・またか。
立体交差になっているらしい。道の端に寄って声の方を見下ろせば、下の方で子供達が騒いでいる。
「・・・もしかして、カバン取られた、とか?」
「おい、お前らいい加減にしとけよ。それ返せ!」
そちらには答えずに下に向かって吠えても、

「返せっていわれてハイそーですかって返すわけないだろ!チービ!」

そーだそーだ!と人のトランクを振り回しながら子供達は騒ぐだけで。


「・・・・・・ほぉ」


ぷつ、と。
何かがちぎれる音が聞こえた。
一端顔を引っ込めて辺りを見回せば、傍らには港で良く見る接岸固定用のロープがとぐろを巻いていて。
エドワードは、パン、とおもむろに手を打ち鳴らした。
赤いコートの子供(子供達は、エドワードと自分たちはそんな年は変わらないと思っている。大きさ的に)が、あまりにもしつこく追い回してくるものだから、何だか途中から別な方向に夢中になっていたのだが。こんな高い橋の上と下では回り道してる間に逃げられる、とたかをくくっていたのに。調子に乗ってあおり立てていれば、不意に頭を引っ込めたと思ったら、ばさ、っという音と共に頭上に何かが広がった。
あ、という間もなく落ちてきたそれに全員絡み取られてしまう。
「何だコレ!?」
「網!?何で!?」
じたばたと藻掻くけれど、絡んだ網から抜けられない。
もう一度頭上の日が陰ったと思ったら、今度は赤いコートが降ってきた。
いや、コートだけじゃなく、がつ、と固い音がして膝を付いて目の前に着地したのは追いかけっこの鬼で。
あの高さから、と呆気に取られていれば、コートの子供はゆっくりと顔を上げて立ち上がった。
・・・何かヤバイと思うような笑みと共に。
パキポキ、と指を鳴らしながら唇の片側が吊り上がったような笑顔一閃。
「…お前ら、覚悟はできてんだろうなぁ?」
・・・固まってしまっていたお陰で、ごめんなさいの一言すら出すヒマもなく。



作品名:One-side game 作家名:みとなんこ@紺