小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

君ト描ク青空ナ未来 --完結--

INDEX|86ページ/159ページ|

次のページ前のページ
 

番外編・Before Thrid Story


1 -Itsuki Side-

その事実が決定的になったのはいつだっただろう。

まだその時自分は小学生だったと思う。
おそらく低学年の時期。

きっかえは同級生の些細な出来事だったと思う。

「お兄ちゃんに遊園地に連れて行ってもらったんだ」

同級生にしてみればきっと当たり前のように発した一言だったんだと思う。
むしろ今までどうしてこんな言葉を聞かなかったのかが不思議でならない。
もしかしたら聞いたのかもしれないけど、気に留めていなかったのかもしれない。

でも確かにその瞬間、気がついた。
そして思い浮かんだ疑問を押しとどめられるほど想像力を持っていなかった。

「うちはお兄ちゃんとしゃべったり出かけたりしたことないけど、お兄ちゃんといっしょにどこか行くのってふつうなの?」

そこからだったと思う。
自分と兄との関係が普通ではなかったということに気づいたのは。

「樹くんのところはお兄ちゃんとでかけたりしないの?」
「お兄ちゃんとはお話毎日するよ」
「樹君のおうち、変だよ」


その日は一日中頭の中がぐるぐるしていて何も考えられなかった。
うちの兄は他とは違うんだってことが気になって仕方なくて、先生に当てられても何も答えられなかった。



「樹、ちょっといらっしゃい。先生から電話があったわ」
家に帰って母親から呼ばれる。
居間の畳に母親と向かい合わせに座った。
なぜかこうするといつも母親からは妙な威圧感を感じて緊張した。
「どうして今日は先生からの質問に答えられなかったの?」
何も答えない。言い訳をするよりもきっとこっちが正解。
こうするといつもお母さんは言う。
「お兄ちゃんはそんなことはなかったのに」
怒られるときはいつもこの言葉。
自分と兄は違う、いつもそういわれてきた。
だから、当たり前のようにその言葉は口から出てきた。

「お兄ちゃんは本当に僕のお兄ちゃんなの?」
そして返ってのは
「こっちが聞きたいわ」
という言葉だった。

その言葉を自分がどんな風に受け止めたのかは覚えてない。

丁度そんなことがあったときから一ノ宮と鷹島の付き合いは始まった。
鷹島グループの総帥が自らうちへ商談へやってくるというのは当時うちにとっては大きなイベントのようなものだったに違いない。
使用人が総出で家中を磨き上げ、父親も母親も兄も身だしなみに余念がなかった。
いつもと違う立派な格好をさせられて、万が一鷹島の人と会ったときのために挨拶を叩き込まれて嫌な思いをした。
そのせいか、黒塗りの車で現れたその人たちにいい印象は抱いてなかったと思う。
けれども、顔を見た瞬間にひきこまれるっていうのをその時初めて体験した。
鷹島の父子。
父親のほうは貫禄のあるおじさん。
もう一人のはまだ若くて20歳くらい。
びっくりするくらい魅力的な容姿をしていた。