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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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「なんで・・・」
「理由は簡単だよ。匠さんは両親の思うままに生きてきた。でも樹はそうじゃない」

『どうして匠みたいに育たなかったのかしら・・・』

あの時、樹さんが言われた言葉を思い出す。
「そんな・・・」
「信じられないかもしれないけど、それが現実なんだ」

何も返事することができなかった。
だって、家族なのに・・・。

「そして、この家がそんな状態になったのは一ノ宮が鷹島さんから関係を切られてからだそうだよ」
鷹島っていうのは聞くまでもなく誠司さんのところ・・・。
「だから、樹さんは誠司さんのことが嫌いなんですか・・?」
そんなことをきいたって返事はもらえなかった。
当たり前だ、答えはわかりきってる。

「嫌い、なのかな・・・」
「え?」
「なんでもない」

聞き返してももう答えはもらえない。

こんな話を聞いた後では、誰が悪いんだからわからない。
昨日までの敵は一ノ宮であり、樹さんだった。
でも、今は違う。
一ノ宮の人も不正をしたとはいえ、重大な取引に切られたっていう点では被害者なのかもしれない。
家庭も不調和になってその一番の被害者はきっと樹さんなんだと思う。
そうした原因は誠司さんの会社。
でも敦也さんの話によると、一ノ宮を始め樹さんは僕になにかすることで誠司さんを攻撃しようとしてるってこと。
いろんな矢印が交錯してて誰が被害者で誰が加害者かなんてわからない。

「暇じゃない?樹がいない間」
突然の話題変換。
「特にもう話すことないし」
「そうなんですか・・・?」
「そうなんだよ」
でもまだまだ聞かなきゃいけないことはたくさんある気がする。
「空流くんになにかあるなら、聞くけど?」
あるはずなのに、具体的な言葉となって出てこない。
思いつくのは、一つのことだけだ。
「あの、話って言うかお願いがあるんですけど・・・」
「なに?」
「誠司さんに連絡をとりたいです。一言だけでいいですから」
元気です、心配しないでください。
それだけ伝えたい。
「それは・・樹にきいてみる」
「樹さんがいいっていわないとダメなんですか?」
そんなんじゃ、連絡なんて絶対取れない。
樹さんがいいなんていうはずが無い。
「俺だって樹に黙ってそんなことしたら怒られるし」
「樹さんには言いません」
「それでもだめ。樹に黙って協力したとしても、俺にとっていいことはなにも起こらないんだよ」
「それは・・・そうですけど」
でも、ここで負けちゃだめだ。
「僕に出来ることなら、何でもします」
「言うねえ」
可笑しそうにニヤりと笑う。
「お願いします」
まっすぐに目を見てから、頭を下げた。
返事が返ってきたのは意外とすぐ。
「いいよ、そこまで言ってくれるなら」
予想外の返事に顔を上げて、敦也さんの顔を見た。
「いいんですか・・・・?」
「明日、鷹島さんの電話番号調べてきてあげる」
明日、誠司さんに連絡がとれる。
「ありがとうございます」
これで少しだけ肩が軽くなった。
ずっと無断で心配をかけ続けているという咎が消える。
「その代わり、なんでもしてくれるんだよね?」
「はい、僕に出来ることなら」
そんなにないことはこの人もわかってると思うけど。

「樹のこと、何があっても恨まないであげて欲しい。できれば俺のこともかな」
樹さんはまあわかるとしても・・・なんで敦也さんまでうらまきゃいけないんだろう。
「質問はなし。わかってくれたなら、返事して」
よくわからないけど、恨まないということだけなら出来そうな気がした。
「はい、わかりました」
「ありがとう」
そう言いながら微笑んだ顔は今までの敦也さんのどの顔よりも柔らかかった気がする。