小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 http://2.novelist.jp/ | 官能小説 http://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

君ト描ク青空ナ未来 --完結--

INDEX|78ページ/159ページ|

次のページ前のページ
 

第二部・40話〜46話


40

「あの・・・」
「ところで・・・」
樹さんが充分に遠ざかる足音を聞いた後、話しかけたのが同時。

「あ、すみません。どうぞ」
「俺の話はたぶん長くなるから、空流くんからいいよ」
そういわれて素直に聞くことにした。
「あの、樹さんが出かけてるのに部屋にいていいんですか?」
部屋主が留守のときにいるなんてなんだか変。
「まったくきみは見当はずれな質問するね」
口を押さえて少し笑ってた。
「だって・・ここは樹さんの部屋だし、他の家族だって住んでるのに・・」
部屋主がいない部屋にいるなんて気まずいことこの上ない。
「それを言うならさ、どうして俺が樹の迎えもなしにここにこれると思ってるの?」
「あ・・そっか」
そういえば、敦也さんは昨日もここから直接帰ったし、今日もここへ直接きた。
「ここはね、離れなんだよ。敷地内にはあるけど母屋じゃない。離れには樹しか住んでないから俺の出入りが自由ってこと」
「離れ・・。あ、だから今朝あんなに歩いたんだ・・・」
今朝あるいた嫌に長い距離を思い出す。
一つの家の中とは思えないほど遠かったのは、本当に一つの家の中じゃなかったから。
そういえば渡り廊下みたいなものを歩いた気もする。

「でも、なんで樹さんだけ離れなんですか?」
なんとなく聞いたその質問にはとても苦い顔をされた。
「それは・・・俺は知らない」
苦々しく目をそらされながらいわれたそれが嘘だってことくらいわかる。
「正確には、そう言うことにしておかないとダメなんだ」
言ってる意味がよくわからなくて首をかしげる。
「今朝、樹と一緒に母屋に行ったならわかるはずだよ。樹が両親とどういう関係なのか」
樹さんの体に浮かぶ青痣を思いだす。
「樹さんがああいう怪我をするのは、いつもなんですか?」
「たまにだよ」
今日だけじゃなくて、たまに。
でも今までに何度もあんなことがあるなんて・・・。
「・・・お母さんにやられてました・・・」
「うん」
「でも、母屋の部屋に入る前、中から言い争う声と人を殴るみたいな音が聞こえたんです」
「・・・うん」
「たぶん・・・伯父さんが伯母のことを・・・」
「そうだね」
思い出すだけでも怖くて、声はしぼんでいくし、目線もどんどん床のほうへと下がる。
「大丈夫だよ」
そんな声を聞きながら頭に手を置かれるのを感じた。
でも違う。こんな風に宥められていい訳がない。
だって・・・
「原因は、僕なんです」
たぶん、あの二人が言い争ってたのもだし、樹さんは僕のことを守ってくれたから怪我をした。
「だから・・・どうしていいのかわからなくて・・・」
「君が責任感じる必要はなにもないよ。さっき樹と言い争ってたのは、どうしたの?」
「あれは、お兄さんが・・・」
心配の言葉一つかけずに行ってしまったから・・・。
家族なのにって思ってつい引き止めた。
「それを怒られたんです」
「うん、それは怒るかもしれない」
「なんでですか。兄弟なのに・・・心配して当たり前だと思いますけど」
「・・・いろいろある、なんていう言葉じゃ納得しないんだろうね」
「はい」
いろいろってなんですか。
「でも、それくらいしかいえない。匠さんは昔から樹に無関心だし樹は匠さんのことを良く思ってない」
「なんでですか」
「自分に無関心な人へ好意を抱こうとするのは難しい、これが一番の理由じゃないかな」
「一番ってことは、二番もあるんですか?」
手が頭を掻いた。これはちょっと失敗したときのこの人の癖。
「あるけど・・・ここからは俺の独断で君に話していいことではないと思う」
「それでも、気になります」
はっきりそう告げるとしばらく敦也さんは黙りこんだ。
たぶん迷ってた。
その迷いに水を差さないために何も言わなかった。
しばらく後、敦也さんがやっと口を開いた。
「今から独り言をいうから」
どこかで聞いたことのある言葉。
少し前にペンションで俊弥さんが同じことを言った。
やっぱり、兄弟なんだと思う。
そんなことにちょっと嬉しくなって敦也さんをみたけど、そんな気持ちは簡単に打ち砕かれた。

「おばさんから暴力を受けるのは樹だけ。匠さんはいっさい手を上げられたことはない」