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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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39

「ごちそうさまでした」
そう言って箸をおいたら、二人は顔をしかめた。
「空流くんの分はとりわけた方がよかったかな・・・」
敦也さんがそう呟いたけど、その意味がよくわからない。
「変なふうに遠慮しないでくれる?こっちが不快になる」
変な風に遠慮ってなにが・・・。
よくわからないけど樹さんを不快にさせたことだけは確かなようだった。
「・・・すみません」
原因はわからないけれど、朝からずっと機嫌が悪い樹さんには素直に謝る。
「樹、今のは言いすぎだよ」
「じゃあ敦也が優しく言ってあげれば?」
明らかにイライラとした調子で敦也さんに言った。
そんなことには慣れっこなのか敦也さんは軽くため息をついただけ。

「空流くん、遠慮しないで食べていいんだよ」
「遠慮なんて、してません」
本当に遠慮なんてしないで食べたのに、その言葉は信じてもらえなかったみたい。
「樹と空流くんで半分ずつ。そういう目安で買ってきてるんだから」
「でも、本当にお腹いっぱいで・・・」
そこまで言うと、たぶんまだ信じてはもらえなかっただろうけど引き下がってくれた。
「じゃあ、余ったぶんはとっとくから後で食べるといいよ」
「はい」
そうしてくれるなら、それがうれしい。
今ここでまた無理に食べてしまうと・・・伊豆の二の舞になりかねない。
それだけは、避けなきゃいけないから。

「ずいぶん小さい胃袋なんだね」
樹さんが呟くように言った。これが嫌味だってことくらいわかる。
「確かに少食だね、こんな少食じゃあ給食とかも大変だったんじゃないの?」
そしてそれが嫌味にならないようにと敦也さんからのフォロー。
「昔はけっこう食べるほうだったから平気でした」
敦也さんの言葉になら素直に答えることが出来る。会話が続くように言葉を振ってくれているから。
「昔は?」
僕の言葉を拾ったのは以外にも樹さん。
そういわれて、自分の発言が不用意だったと気がついた。
今はどうして少食なのかを答えることはできない。
だって少食になった原因は・・・さっきこの人にを傷つけた人なんだから。
「樹、早く食べ終わりなよ。実習遅れる」
また、敦也さんからのフォロー。
「・・ああ、そっか。実習だ・・・」
「まさか忘れてた?」
「昨日の夜までは覚えてた。敦也は今日は?」
「俺は今日はなし。留守番してる」
「・・・いいけど、余計なことはしないでよ」
「わかってる、空流くんの暇つぶしの話し相手だよ」

「余計なこと、言わないでよ」
僕にそう言って、ごちそうさまもなしに箸をおいて立ち上がった。
鞄にものを出し入れしてる。
それが終ると歯をみがいてくるといって部屋を出て行った。
「話は樹がでかけてからね」
いいながらテーブルに広がった惣菜を片付け始める。
それを手伝いながら、小声での会話が続く。
「空流くんが少食なのはやっぱりここの人のせいなの?」
「はい」
「そう、樹の前ではっきり言わないなんて優しいね」
「そんなことないです」
それだけの会話をしたすぐ後に樹さんが部屋に戻ってきた。

「敦也、帰るときは・・」
「樹が帰ってくるまでいるよ」
「・・・わかった」
「いってらっしゃい」
敦也さんがそう送り出すと樹さんはうんとだけ言って部屋を出た。