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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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車にのせられて、しばらく走った後に着いたのは立派な門構えの家。

「ここが今日からお前の家だ。」
門を通って、母屋へ入った。

「あとは頼むぞ」
「ちょっと、あなたっ!」

男の人は家の中へ早々と入っていって、女の人と二人で玄関に残された。

「どうしろっていうのよ、いきなりこんな存在も知らなかったような子引き取れなんて!」

今日からこの家で生活しないといけない・・・?

「嫌そうな顔してんじゃないわよ。こっちだってあんたみたいな子を引き取るなんていい迷惑よ」

仕方ない・・・か。
僕がここで生活しないといけないのも、仕方がない。

「今日から世話してやろうってのに、よろしくお願いしますの一つも言えないの!?」

仕方ない、から・・・。

「よろしく、お願いします」
「何いってんの、口パクパクさせてるだけじゃ聞こえないわよ!」
「よろしく、お願いします!」

ちゃんと言ったのに、口をパクパクさせてるだけなんて、そんなことを言われた仕返しに大声で叫んだ。

明らかに不振そうな顔をされて、その後に慌てて家の中へ駆け込んでいった。
玄関に一人、取り残される。


そっと、家の中に入って、廊下を歩いた。

一つの部屋の中から話し声が聞こえたから立ち止まる。
間違いなく、さっきの人たちの声。

『あの子、口をパクパクさせるだけで声がでないのよ。しかも自分では出てるって信じてるみたいなの、ねえこれって精神病って奴じゃないの?』
・・え?声が、出てない・・・?
『精神病・・・?』
『そう、私前に本で読んだ事があるのよ。ねえ、あなた。あんな子を引き取るのやめましょうよ。ただでさえ、あれなのに、おまけに精神病だなんて、うちの家名を汚すのもいいところだわ』
『・・・それは確かに問題だな』
『そうでしょう?ねえ、あんな子追い出してちょうだいよ』
『追い出すわけにはいかん。それこそうちの家名を穢す行為だ』
『でも・・・!』
それから、しばらくの間。
『あの子に身寄りなんてないんだし、もういっそのこと・・・』
地からにじみ出るような女の人の声。
『それ以上言うな。お前が言いたいことはわかってる。それでも今はダメだ。いくら身寄りがないとはいえ、誰が探しに来るかわかったもんじゃない。とりあえず半年、様子をみるぞ』
『わかったわ。でもそれまで私にあの子の面倒を見ろって言うの?』
『倉庫にでも放り込んでおけ。どうせそのうち居なくなる』
『そうね、そうしましょう』

そっか、僕は殺されるのか・・・。
それでもいいか。
母さんも、もういない。
もしかしたら、殺されればまた母さんに会えるかもしれないんだ。
それでも半年ここで生活しないといけないのは、嫌だな。
殺すならさっさと殺してくれれば良いのに。

その部屋の襖が開いた。

「お前っ!」
そういわれて、男の人に腕をつかまれた。
「今の話を聞いたな?」
素直に、うなずいた。
「聞いたなら、ますます逃がす訳にはいかなくなった」

腕をつかまれたまま、母屋の外に出て、倉庫らしい建物の前に来た。
「お前の家はしばらくここだ」
中に放り込まれて、外から鍵を閉める音がした。
当然中からは開かない。
窓は到底手の届かない場所にある天窓だけ。

ほこりっぽくて、薄暗くて、寒い場所。
食事は一日2回。
毛布一枚と、何日かに一回の1杯の洗面器のお湯。

与えられたものは、それだけだった。