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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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11

「誠司さま」
部屋を出ると、加川が話しかけてきた。
「丁度よかった。しばらく彼は私が預かることとなった」
加川はわずかに目を見開いただけだ。
「なぜ私が彼を助けたのか不思議か?」
「はい」
「自分でもわからない。こんな感覚は久しぶりだ。この自分の気持ちに対する興味かもしれないな」
「ですが・・・」
「わかってる。もしこの気持ちが途中で醒めたとしても最後まで面倒は見るつもりだ。とりあえずは夏いっぱい。空流の怪我が治るまでは」
「はい」
「すまないが、よろしく頼む」
「滅相もありません」
下げてきた食器を加川に渡して、自分の部屋へと戻った。

風呂からあがると、今さっきまで撫で付けていた髪が広がっている。
仕事から解放された合図になるのは撫で付けていない自分の髪。

そういえば、仕事以外のことにこんなに時間を使ったのは随分久しぶりだ

そして年下と接したのも、最後はいつかわからないほど久しぶりだった。
生きてきて、年下と話す機会なんてほぼ皆無に等しい。
仕事で話す相手なんて自分よりも一回り以上も上な人ばかりだった。
今更ながら、どう接したらいいのかわからないなんてことを思う自分に苦笑する。

「あいつに電話してみるか・・・。」
思いついたのは唯一といって良いほどの友人。
携帯をとって、数少ないメモリーからナ行の文字を探す。
仲原俊弥(ナカハラ・トシヤ)。大学時代から妙に気が会って、今でも数ヶ月に一回は飲みに出かける関係。

コール2回で目当ての人間は電話に出た。
『誠司か。久しぶり。相変わらず不摂生な生活してるのか?』
久しぶりに聞く声だ。最近慌しかったから、なつかしささえ感じる。
「数ヶ月ぶりの第一声がそれか、相変わらずだな」
『おあいにく様。オレはお前にまで気使ってられるほど暇じゃないんだよ』
「今忙しいのか?」
『今は大丈夫。どした?何かあったのか?』
「実は・・・人を拾った」
『・・・は?』
リアクションもずっと昔のまま変わってない。
俊弥のリアクションが面白くて、わざとこういう言い方をしている節もある。
だけど、もちろんこれだけで説明を終わらせるわけではなくて、経緯を説明してやった。
『はぁ・・・。たまに突拍子もないことしでかすのが誠司だとはわかってはいるけどなあ。さすがにビックリした。それで何が問題なんだよ、とりあえずはお前が預かる事で落ち着いたんだろ?』
「・・・どうやって接して良いかわからないんだ。」
『なんだそれ』
「まさか仕事相手にするみたいにして接するわけにもいかないだろ?完璧に立ち往生だ」
『んだよ、そんなことか。それじゃあ数少ない友だちのオレに接するみたいに接してみれば?』
「そう思って電話した」
『なるほど、オレはその空流クンとの予行練習なわけか』
「そんな言い方するなよ」
『わかってるって。冗談だよ。相手と一緒に時間をすごせばどう接すればいいかなて自然とわかるようになるさ。あ、それよりまた飲み行くの付き合えよ』
「ああ、わかってる」
『ま、あいてる日わかったら連絡頼むわ。オレはいつでも暇だから。じゃな』
「ああ、じゃあな」
そういって電話を切った。

『持つべきものは友』
誰が言ったのかは知らないが、こういうときにその言葉が身に染みる。

「相手と時間をすごせば自然とわかる、か・・・」
俊弥の言う通り、何も考えずにいってみるか。

何も考えない、ということが何より難しいとわかったのは、すぐ。
本を読んでもパソコンをつけても、挙句の果てには仕事を始めてしまっても手につかなかった。