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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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加川に食事を運ばせるように言った後、一ノ宮に電話をかけるために書斎へ入った。

電話番号を調べるために喜田川にコールをする。コールすぐに相手は電話に出た。
「喜田川?私だが」
「はい、いかがしました?」
「休暇中にすまない。昔の取引先に一ノ宮という家があっただろう。確か飲食系企業をいくつかもってる家だ」
「はい、ございますね」
「そこの自宅の電話番号はわかるか?」
「はい、少々お待ちください」

すぐに電話番号が電話の向こうで読まれた。
喜田川に礼を言って電話を切る。

メモした10桁の数字を電話に入力する。
コールを何回かした後に、相手が電話に出た。
『はい、一ノ宮でございます』
電話に出たのは、多分使用人。
「突然のお電話申し訳ありません。わたくし鷹島誠司と申しますが、一ノ宮彰人様をお願いできますでしょうか?」
『鷹島誠司さまでございますね、少々お待ちください』
保留メロディーが流れ出して、しばらくしてから受話器が上がった。
保留メロディーが流れている間に、電話の向こうで何が起こっているのか予想するのはたやすい。
『た、鷹島様、お待たせいたしました』
電話の相手の焦っている声が予想を裏切らない。
「突然のお電話失礼いたします。本日は少々個人的なお話がありまして」
こういえば、相手の頭には都合のいいことが浮かぶだろう。
個人的融資の話やら何やらが相手の頭に中には渦巻いているに違いない。
『何でございましょう?直接お会いした方がよろしいお話でしょうか?』
媚びるような声。
自分に都合がよく、かつ電話でするのは危ないような話だと思い込んでいる。
「いえ、今のところは電話で充分です」
『左様でございますか、早速ご用件をお伺いしても・・・?』
「ええ、そうでした。すみません」
次の言葉を言った瞬間の、相手の顔が想像できる。
「寺山空流君という子をご存知ですね?」
すぐに返事は返ってこなかった。
『は、はい。うちで預かっている子どもですが、・・・何か?』
「お宅で預かっている?」
『は、はい・・・』
「空流君は今、私が保護しています」
電話越しでも相手の顔が青くなるのがわかった。
『も、申し訳ありません!すぐに引き取りに参ります!』
「いいえ、結構です」
『はい?』
「ですから、結構ですと申し上げました。彼からあなたの家でうけた仕打ちは全て聞きました。大分酷い扱いをなさっていたそうですね」
『そ、それは・・・空流が大げさに言っているだけでしょう!』
「体中の痣を私が見たとしてもそうおっしゃいますか?」
きっと電話の相手はがたがた震えてるだろう。
『空流の世話は妻にまかせていたもので、私は何も・・・!』
その言葉をきいて、ため息が出そうになった。
最初は嘘、それからは空流のせいに、その次は妻に責任を押し付ける。
こういう人間をみると虫唾が走る。
「それに空流君は酷い怪我をしてまして、わたくしの方でしばらく預からせていただきたいと考えています」
『ですが・・!』
「あなた方に彼をお返しするにあたっては家庭裁判所を通させていただきますが、確か今重要なお取引の最中では?」
取引の最中に裁判所沙汰なんて、ありがたいことではないに決まってる。
こう言えば、相手は何があっても断れない。
「空流君はわたくしが預からせていただきます。よろしいですね?」
断る事を許さない念押し。
相手が力なくよろしくお願いしますと言ったのを聞いてから、受話器を下ろした。

使えるものは、自分の権力でも何でも有効に使わなければ。

これでしばらくは、彼を手元に置いておける。