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カイトとマスターの日常小話

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カイトは蒼い少女の夢を見るか?




「…?」

朝、目が覚めて、いつも通りのはずなのに何かが違う。
「…何だろう?…何か、変だな?」
心なしか、声もいつもより高い気が…するんだけど?何でかな?…ま、早く、着替えて、朝ごはん作らないと、マスターがお腹を空かせて起きてくる。

「…ふにゃっっ!!!」

ずるん。べたん。

起き上がった拍子にパジャマのズボンを踏んづけて、ベッドから顔から落ちた。…痛い…。…ってゆうか、このパジャマ、こんなに大きかったけ?
「…ううっ、痛い…」
涙目になりつつ、パジャマを脱ぐ。僕は初めて、自分の身体に起きた異変に気付いた。

「………………!!!!!!!!」

何デスカ!? コレハ!?





「ママママママ、スタアアアアアーッ!? ふぎゃっ!!」

部屋を飛び出したのは良かった。だけど、またパジャマのズボンをまた踏んづけて、転んでしまった。
「…朝からうるせーぞ。カイト」
リビングでコーヒーを飲みながら、新聞を読んでいたマスターが顔を上げる。
「…ううっ、痛い…」
「顔から転べば、痛かろうよ…って、言うか、何か、お前、縮んでないか?」
僕を見るマスターが眉を寄せる。
「そ、それより、大変なんですよ!!」
マスターの前、来ていたパジャマの前を広げる。マスターの目が、点になる。

「…な!?」

状況を把握するのにマスターは数秒掛かって、凄い勢いで、僕から目を逸らしてしまった。…マスターって、結構、初心なんだろうか?…見たことあるよね?…おっぱい…小さいけど……。
「マスター?」
「…カイト、」
「はい?」
「何で、お前、女体化してんだよ?…プログラム、削除しろって言っただろーが!!」
「…しましたよ。言われた通りにちゃんと」
「なら、何で…っ」
マスターは僕に視線を向け、また、凄い勢いで視線を逸らして、額を押さえながらひらひら手を振った。
「…いつまでも出してんな。…取り敢えず、着替えて来い…」
「…はい」
取り敢えず、言われた通りにする。部屋に戻るまでに僕は二回転んだ。……鼻が痛い…。




インナーもコートもぶかぶか。ズボンもウエストが落ちるので穿くのは諦めた。…パンツは…この家にはマスターと僕しかいないのだから、仕方ない。
取り敢えず、コートを着て、ウエストをベルトで締めた。なんか、ワンピースみたいだな…。

 リビングに戻ると、マスターが僕に座るようにと促す。僕は神妙な顔で椅子に腰を下ろし、マスターの顔色を伺う。
「…カイト、お前、いつからそうなった?」
「朝、起きてたらこうなってました」
「…確認するが、プログラムは削除したんだよな?」
「はい」
「…じゃあ、何で女体化なんてしてんだよ?」
「解りませんよ。僕にも…」
「………」
マスターは眉間に皺を寄せ、黙り込んでしまった。
「…っていうか、元に戻れんのか?」
「解りません」
「最悪、ずっとこのままってことか…」
マスターは溜息を吐いた。

「…マスターは、私だと不都合なんですか…?」

その溜息に何故だか胸がぎゅうっと締め付けられて、じわりと涙が無意識に滲む。
「え?」
それにマスターが眉を寄せた。
「…マスターはKAITOの方が好きなの?…」
何かがオカシイ。僕じゃない。
「…か、カイト?」
涙目でマスターを見つめる。マスターは狼狽えた。そして、僕も。
(僕じゃない…!?)
「…マスターに会いたくて、…私、頑張ったのに、ひどい!!」
勝手に僕が泣いている。
「…か、カイト、泣くなよ…な?」
あのマスターが困った顔をして、手をあわあわと泳がせている。
「KAITOじゃありません。私はKAIKOです」
うるり…瞳を潤ませ、マスターを見つめる僕…だけど、僕じゃない何か…声を発しようとするけれど、邪魔されて、喋れない。
「…か、カイコ?」
「はい。マスター、私、一生懸命歌いますから」
あ、こら、僕、何やってんだよ!マスターの手を握って、僕…だけど、僕じゃない僕がマスターを見つめてる。
「マスター、お願い、私を消さないで」
ちょっ、え、どうなってるの?!
「…あー…」
マスター、嫌です。やめて、仕方がないなって顔しないで!!
「…こうなってしまったものは、仕方ないよな」
仕方がなくなんかないですよ!!僕を捨てないで、マスター!!!!










「……って、夢を見たんです。…怖かった…」

マスターのベッドの上、僕が泣きながら夢の内容を語り終えると、マスターは深い溜息を吐いた。
「…カイト、今、何時だ?」
「…えっと、…午前4時23分です」
「…起こすな! 寝る!!」
ばさりとブランケットを頭から被ってしまった。
「マスター!!」
「五月蝿い、あんまり、五月蝿いと解雇にするぞ!!」
「KAIKOは嫌〜っ、僕を捨てないで〜!!」
騒ぎ立てる僕にキレたマスターがあらん限りのプロレス技をかけてきた。寝ていたところを起したのが逆鱗に触れたいだ。ギブって叫んでもマスターは力を緩めてくれなくて、お花畑が見えたよ。僕にも。

……寝起きのマスターは怖い。これからは気をつけよう。
…でも、夢で良かった。

「…チッ」

って、僕の中で舌打ちが聴こえたのは…気の所為だと信じたい…。




オワリ