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青いイチゴ

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イチゴ、買っちゃった。嫌いなのに。なんか食べたくなったんだ。いつ以来だろう。
 イチゴ、青い。しっかり洗っても青い。いくら洗っても青い。かじると酸っぱい。口の中、真っ青だろうな。
 一人暮らしのこの部屋、こんなに広かったかな。ベッド、こんなに座り心地悪かったかな。
 イチゴ、やっぱり酸っぱい。
「ねえ、どうすれば嫌なこと、忘れられるの」
 イチゴが嫌いになったばかりの頃、四歳の終わり、お母さんに尋ねた。
「お豆腐をたくさん食べると、心が柔らかくなって、辛いのを忘れられるよ」
 お母さんは答えた。当時のわたしは豆腐が苦手でいつも残していた。後になって考えれば、わたしの弱みを利用した作り話だ。でも、わたしはその作り話を信じて、毎日毎日豆腐を必ず食べた。お味噌汁の具の豆腐を家族の誰よりもたくさん入れてもらった。もちろん、心が柔らかくなりはしない。ここにいる十九歳のわたしは、イチゴが嫌いなままだ。ただ、今こうして健康に暮らしているのは、お母さんの嘘のおかげかもしれない。感謝しよう。
「ねえ、イチゴって聞いたら、何色が思い浮かぶ」
 大学に入学してすぐの頃、クラスメイトの高橋さんに質問した。
「そりゃあ、赤でしょう。まあ、ピンクもありかな」
 高橋さんは答えた。予想していた通りの答えだ。赤系以外の答えが返ってくるなんて思っていなかった。じゃあ、なんでわたしは質問したんだろう。笑い話にしたいぐらい無意味すぎる。
 わたし、くだらないことにこだわってばかりだ。「世界で最初に個室トイレ作った人って、世界最高に恥ずかしがりだったんだろうね」いつだったか誰か言っていた。わたしも同じぐらい、恥ずかしがりかもしれない。だって、自分を出すことに怯えてばかりいる。たかだかイチゴのことなのに。
「ねえ、ランと四谷君って、仲いいよね」
 大学に入学してから半年経った今日、高橋さんに言われた。
 みんな、わたしのことをなぜか下の名前で呼ぶ。呼びやすいからかな。親しみの表れって考えるのは、自意識過剰かな。
「まあ、恋人だしね。仲いいのが普通でしょう」
 わたしは答えた。
「そんなことないよ。逆に仲悪いのが普通かもね」
 高橋さんは笑いながら言った。
 わたしも笑った。
 高橋さんはシュウちゃんのことを四谷君と呼ぶ。シュウちゃんを下の名前で呼ぶのは、とりあえず身近では恋人のわたしだけだ。
作品名:青いイチゴ 作家名:青春B