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イハティーサ
イハティーサ
novelistID. 8424
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カンパニー、東へ!(仮題)

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「こんにちは」

ぽかんと口をあけた車庫兼倉庫から、ゆらりと男の影がのびる。

「あらホリスさん、いらっしゃい」

奥からは涼やかな女の声。ややあって、声の主が現れた。
24,5才の亜麻色の髪をしたすらりとした女性である。


ここは、スターフォールの北西部に位置するアマモシティの一画。
カンパニーと呼ばれる砂漠の賞金稼ぎが軒を連ねる区画である。
そのはずれにアイヴィという小さなカンパニーがある。


「やぁレオナさん、お久し振りです」

ホリスと呼ばれた男は、細い眼を一層細めて笑う。
日に焼けた精悍な青年だが、間延びした口調がそれを打ち消している。

「また、出張されてたんですか」

「ええ。南のキャンプでずっと一輪刺しの駆除」
「南のキャンプっていうと、アイラさんところのキャラバン関係か何かで?」
「いいえ、今回のは向こうの自警団からの依頼。最近ちょっと増えてきたんですって。一体どこから沸いてくるのか知らないけど、ほんとキリがなかったわ。5つのカンパニーがフル回転でもだめなんだから、ホントいやんなっちゃうわ」

ため息。

「ま、ある程度は減らせたんで、向こうで何とかするって話になったのは良かったけど、そしたら今度は社長が急に戻ってこいって騒ぎ出すじゃない。それで、強行軍で戻ってきたのよ。転送装置が動いてなかったら、ヒサンなことになってたわ」

小さな欠伸。

「おかげで寝不足」
「そりゃあいけない。せっかくの美人が泣きますよ?」
「どうもありがと。
 で、今日は何かお探し?」

世辞には興味なさそうにレオナは答える。
ホリスも別に気にする様子もなく、飄々としている。いつものやりとりだ。

「掘り出し物は何かありますか?」
「ううーん、今は、鉄くずと修復剤が安くできますよ」
「うーん、鉄くずはいいとして、修復剤ですか。僕は戦車持ってないからなあ」


「じゃあ、鉄くずをいただきます。あと、スクラップはあります?」
「ええ。どれくらい要ります?」
「ええと、とりあえず500くらいいただけますか?」
「500ね。品物はいつものようにホリスさんのアトリエまでお届けすればいいかしら?」
「お願いできますか?」
「ええ」
レオナはにっこりと笑う。

「じゃあよろしく頼みます」

そういってホリスも細い目を一層細めて笑った。

「そういえば社長の姿が見えないようですが」
「それが戻ってみたら、いないのよ」


「まったく失礼しちゃうわ」


*

「戻ったよ」

夕刻、納品を済ませた車輌がもどってくる。
灰褐色の4WDだ。兵装を積んで戦車として運用しているが、小回りが利くため、兵装を外して、シティでの輸送に使うことも多い。

「あら、エリクおかえり。おつかれさま」

奥からはレオナの声。
エリクと呼ばれた少年は、慣れた動作で車輌を納め、運転席からぴょんと飛び降りた。褐色の肌をしたシルバーブロンドの少年である。あどけない顔立ちに少年らしい透き通った眼をしている。大きな目は人懐こさと好奇心であふれている。

「ねえねえ、レオナ」

目をキラキラさせてエリクが言う。

「なあに?」
「ホリスさんが、レオナちゃんによろしくだってさ」
そういってニカッと笑う。
「はいはい。あの人も相変わらずなんだから」
レオナはにべもない。
からかい甲斐がなくてつまらないのか、エリクはぷうと頬を膨らませる。

「いいもの作るから、今度安くお分けしますよ、だって」
「あらそう」

眉間にしわが寄る。

「でもあの人が作るものって、ろくなものないじゃない。マネキンだかなんだかよくわからないものとか」
「芸術なんでしょ」
「どうみてもただの鉄クズだわ」
「ホリスさんがそれ聞いたら泣くよ」
「あら、そんなことないわよ」
「そうかなぁ」

どうもエリクはホリスのことが気に入っているらしく、何かと話題にする。年上の兄弟のように見えているのかもしれない。アイヴィはこじんまりとしている分、社員の間にはなかば家族の様なつながりがある。エリクには身寄りがいないから、そのつながりをことさら強く感じるのだろう。エリクは年上の男性社員にべったりで、かわいがられている。それは社長もレオナも同じだった。エリクが社長に拾われてきた頃に比るとば、別人のようだ、とレオナはいつも思う。当時は誰も信頼できず、孤独で、周囲とぶつかってばかりだった。ホリスがレオナに気があることは秘密でも何でもないが、それをことさらレオナに伝えてくるのは、エリクなりのレオナに対する愛情表現なのだろう。


レオナは人差し指を口元に当て、話題を変える。

「ああ、そうそう」
「ん? 何?」

「スージーの兵装チェック終わったってイハが言ってたわよ」
「今回は早かったね」
「なんだかいつも遅いみたいな言い方ね。それ、本人に言ったらへそ曲げるわよ?」
レオナは意地悪な調子で言う。
「言わない言わない」
「それで、足回りのチェックもするから、戻ったらすぐ車庫に回してくれって」
「了解」

そういってエリクは降りたばかりのスージーに乗り込む。

「でも」
「何?」

「戻ってきたばっかりなのに、兵装のチェックなんてどうしたのかな。新しいの入れる予定あったっけ?」
「そういえばそうね。どうかしたのかしら?」

カンパニーに取って戦車はなくてはならないものだ。遠征、探索、輸送などなど、戦車がなくてはカンパニーの業務は成り立たない。いわばライフラインであり、それだけにメンテナンスは怠ればそれだけ損失につながる。それに、レオナ自身も戦車に乗ることもあるから、整備不良は命に関わることもよくわかっている。だから整備には多くの予算をまわしているし、多少の赤字も必要経費だ割り切っている。可能な限り装備にも投資をしている。整備班もそれはよく分かっていて、決して潤沢とはいえない予算のなかで、何とかやりくりしているのが現状だ。ただ、このところ、新しい戦車用の装備を購入する予定もなかったはずで、兵装のチェックというのも言われてみれば少し変だ。

「やだ、なにこれ!」

レオナが帳簿を開くと、知らない注文がいくつも並んでいた。

「新しい主砲が2門、バルカン砲の新品が3門、ミサイルランチャーが2基ですって?! このままいったらだいぶ赤が出ちゃうじゃない!」
だいぶどころの騒ぎではない。ざっと見ただけでは分からないが、下手をすれば者が傾きかねないレベルの出費だ。血の気が引くのが分かった。指先が震えて来る。
「ちょっとぉ、経理なんだから、そこらへんしっかりしてよォ。給料なしとか俺イヤだからね」
エリクが口をとがらせる。
「わかってるわよ!」
怒気を含んだ声。

「ならいーんだけど。
 あっ、俺、イハんところに車回してくる」

強い語気に気圧されたのか
そう言うなり、エリクは回れ右をして車を出した。