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リオ・ナユ

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嗜好



「そういえばカイリ、オマエって男が好きな訳?男限定?」

ある日、ふと思いついたようにリオはカイリに聞いた。
カイリは何個目かもはや不明なまんじゅうをくわえながら首をふった。
食べているまんじゅうを飲み込み、お茶を飲んだ後口を開いた。

「そういう風に見えたかい?別に俺は男専門じゃないよ?まぁこんだけ長く生きてると、別にどっちでも問題なくなるもんだよね?テッド。」
「うん、まぁ確かにな。あまり気にならなくなるな。」

ふられたテッドも頷いた。

「するほうでも、されるほうでも、どっちでもOKだしね?」
「いや、俺は無理。されたくは、ねぇ。」

断言するテッド。ルックが呆れたように言った。

「・・・要するに何でもいい訳・・・?」
「やだなぁ、人を欲求不満の塊みたいに。まぁ相手によるよ?ねぇ?ナユ。」

ふいに呼ばれ、今まで会話に参加せず、ぼんやりテラスからの風景を見ていたナユが、何か?とカイリを見た。

「ナユだったら、されるよりはしたいけどね?ねぇ、俺はどうだい?いい仕事するよ?家事でも何でも、任せてだし、夜の相手としても凄くお勧めだと思うんだ?」

とても整った顔でニッコリあっさりカイリは言った。
呆れる周囲。
ナユは赤くなって慌てて言った。

「ちょ、な何言ってんですかカイリさん!?笑えない冗談、ホント、止めて下さい。」
「おや、冗談のつもりはなかったんだけど?残念だな?じゃあまたの機会にね?」

リオから飛んできたナイフをあっさり避けて、楽しそうにカイリは言った。
そしてリオの方を向いてニッコリ聞く。

「君は?リオ。」
「・・・別に性別はどうでも?でもオマエのように見境なくはないよ?」
「おや、ひどいなあ。ふふ・・・。」
「・・・てゆーか、何なんです、さっきから。酒場にでもいるつもりですか?こんな真昼間のテラスで何のつもりですか・・・?」

呆れたナユが言った。
カイリが首を傾け、ナユとルックに聞いた。

「君やルックはどうなのかな?男相手はいやかい?」
「・・・知りませんよ!!」
「・・・僕も答える義理はないね。バカバカしい。僕はもう戻るよ。」

そう言うと、ルックは皆の目の前から消えた。

「「「あ、逃げた」」」

「わーん、ルックのバカー。1人で逃げるなんてー。僕をこんなゆがんだ場に1人にするなんてー。」
「ゆがんだ?」
「場?」
「なんだそら、って俺も含まれてんのか!?オイ。」
「まぁ、一緒くたにされてるようだよね?」

つっこむテッドにカイリが答えた。

「ちょ、待て。俺はいたって普通だぞ?こんなのと一緒にするなよな。」
「へぇ、テッド、言うね?こんなのって誰のことかな?まさか僕も含めてるのかな?」

リオが黒い笑みを浮かべて言った。
ナユが呟く。

「あんたも十分、僕からしたらたいがいですよ・・・。」
「貴様、聞こえてるよ?」

カチャと武器を構える音がする。
次の瞬間にはお互いの武器がぶつかり合い、ガキッと音が響く。

「お前らなぁ・・・。やるならもっと広いところでしろよな・・・。」

テッドが呆れて言った。
横でカイリが楽しそうに2人に向かって言った。

「どうせやるなら、たまには何か賭けてやりなよ?そうだなぁ、負けたほうが勝ったほうの言う事を何でも1つきくってのはどう?」

攻撃し合いながらも2人が答える。

「へぇ、おもしろいじゃない。」
「ふん、負けませんよ」

そして更に白熱した戦いになった。
リオが棍を突きにいくとナユが片方のトンファで撥ね退け、その勢いでもう片方のトンファで打ちにいく。しかし軽々と体を反らせてそれをよけ、リオは隙をついて棍を回転させナユの下方を狙う。ナユもそれを跳んでよけ、すかさずリオの後ろに回り込んで攻撃しようとする。リオは背後に棍を突き出して器用にそれを防ぐ。

「あいつら・・・なんかすげえな。」

テッドは感心したように言った。
カイリは楽しそうに見物している。
暫く絡み合いが続いた後、リオの棍がナユのトンファの1つを跳ね飛ばした。

「勝負あり、か・・・?」
「いや・・・、前に訓練してる時見て思ったんだけどさ、あの子ってさ、無手も悪くなかったと思うんだよね?」

カイリが言った時、ナユがもう1つのトンファを自ら投げ捨て、武器なしでかまえなおした。
リオはニヤッと笑うと1つ呼吸しなおし、自分も棍をかまえなおす。
ナユからしかけた。

「あれさぁ、なんかトンファない方がすばやくね?十分無手で強くね?」
「ふふ・・・」

テッドの言うとおり数段すばやさが増したナユは次々に拳と蹴りを仕掛ける。リオはそれを棍でよけていく。ナユの速さについていけなくなったのか、リオは飛び下がるが隙だらけである。すかさずそこへナユは仕掛けに行った。

「おっ、ナユで決まりか?」
「ふふ・・・、あれはリオの策略だよ?さすがにまだナユでは見抜けなかったようだね?因みにテッド、君も見抜けなかったかい?」
「・・・。」

カイリの言うとおり、誘われたように向かっていったナユは、あっさり罠にかかり最終的に棍を喉に突きつけられ、参ったと両手を上げた。

「やぁ、お疲れ様。」

くやしそうにテーブルに戻ってきたナユにカイリが言った。
リオはすでに涼しげにお茶の続きを楽しんでいる。
ムスッとしたナユに、テッドがまあまあとお茶をいれてやる。
カイリがそっとリオに言った。

「実は少しヤバかったんじゃないのかい?」
「・・・アレはいっそトンファ持たない方が強いんじゃないの?」

リオの言った言葉は聞こえてないようだが、同じ事をテッドがナユに言った。

「お前ってさぁ、トンファなしで無手のが強えんじゃね?」
「そんな事ありませんよ。だいたい僕はか弱いんですからね、武器がないとぶちのめせないじゃないですか。」

その言葉を聞いた3人はチラッと同じところを見た。
先程ナユが拳を出したときにリオがよけ、それが壁に当たったのだが、かなりそこは凹んでひびがいっている。

「・・・。」
「えーと、じゃあ僕はこのへんで・・・」

ナユが立ち上がり去ろうとしたとき、リオが止める。

「ちょっと待ちなよ貴様。何か忘れてるんじゃない?」
「・・・。えっとそうでしたっけ?ああ食事奢るとかでしたよね?」
「ふふ、おじょうぎわが悪いね、ナユ?」
「・・・諦めろ。」

カイリとテッドにも言われ、ナユは渋々席に着く。
テッドが聞いた。

「因みにお前勝ったら何言おうと思ってたんだ?」
「・・・もう部屋に入ってこないように・・・」
「へえ、残念だね?それはもう諦めなよ?」

ニヤッとリオが言った。
ぐっと詰まるナユに、テッドが同情したようにポンポンと肩を軽く叩いた。
カイリがリオに言う。

「じゃあ、リオは何を言うつもり?」
「さあて、どうしようかな?命でも貰おうか・・・?」
「っ何言ってんですか!?この変態。あげたらもう終わりじゃないですか!?ふざけるなっ。」
「俺だったらナユ自身貰おうと思うけどなぁ。」
「そうかさぁ、城主の権限で酒池肉林てなぁどうだ?」
「ちょ、カイリさん、余計な事言わないで下さいよ!?テッドさんに至ってはほんともう最低です。」
作品名:リオ・ナユ 作家名:かなみ