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白狼のクォンタム

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第五章



 学園に付属する病院に、仲良く収容されたクォとジュオーンだが、しかし二人の容態は異なっていた。
 ジュオーンは、魔法の酷使による精神力の疲労もあったにせよ、それ以上に、白狼と化したクォに受けた攻撃による外傷と骨折が大きく、それらが治ってしまえば、退院も近いだろうと言われていた。
 一方、同時期に同じ病院に入院していたクォは、ジュオーンのように意識を保ったままの入院ではなかった。
 病院に運び込まれてからというもの、クォは眠り続けた。
 ジュオーンとクォを担当した医師は、クォについて、
「こやつ、砂漠で漂流生活でもしてきたのか?体力という体力が、全く残っておらぬぞ。あの爪や耳を使っただけでは、こうはなるまい」
と評した。
 外傷は全くといいほどなかったが、ベッドで昏々と眠り続けるクォの姿は、ひどく小さく見えた。
 レイリスが初めてクォの病室を訪ねたのは、理事長戦の当日だった。
 レイリスは、クォとジュオーンの戦いが終わるのと同時に、ジュオーンとクォの入院手続き・破壊された校庭の修復・ジュオーンが勝者であることのアナウンスなど、様々な作業をシリルに命じた。
 レイリスが一日の仕事を終えたのは、いつもとほぼ変わらぬ時刻で、既に日が暮れかけていた。
 学園からほど近い場所にある、学園付属病院にシリルを連れてやってきたレイリスは、シリルを病院のロビーに待たせ(レイリスは帰れと言ったのだが、シリルが聞かなかったのである)、面会時間の午後八時になり、看護婦に注意されるまで、眠り続けるクォの傍にいた。
 レイリスは、ひょっとすると、そのまま病室に泊り込もうという勢いだったが、結局は大人しく家に帰った。
 病院に来たばかりの時、シリルが帰れと言われても帰らなかったのは、あるいはその為だったのかもしれない。
 シリルがいなければ、レイリスはクォのそばから離れなかったろうから。
 理事長戦の翌日になると、眠り続けるクォの顔を見に、アルファを始め、多くの学友が病院を訪れた。その後も、毎日全員が、というわけではないにせよ、誰も来ない日は一度としてなかった。
 レイリスも、次の日からは泊り込もうとすることはなく、クォが入院していることなど、まるで意識していないかのように、理事長としての役割を務めた。
作品名:白狼のクォンタム 作家名:今朝人