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白狼のクォンタム

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第四章



「やはり、ジュオーンさんの決意は変えられませんでしたか……」
「うん。昨日、あの後お兄ちゃんと話したんだけどね。どうしても戦うって聞かなくて」
「昨日の様子だと、相当自信があるようでしたからね」
昨日の、結界部との対戦の後、ジュオーンと交わした言葉を思い出しながら、クォはアルファに答えた。
 あの会話で更に自信をつけさせてしまったな、とクォは思う。
「だからかな、一ヶ月も待ってくれなくて……お兄ちゃんや私の都合で振り回しちゃってごめんね」
「いえ、アルファさんやジュオーンさんには悪いですが、僕としてはいつでも戦うつもりではいましたから」
「そっか。優しいね、クォ君」
「そういうつもりで言ったわけじゃありませんが」
「ふふ、照れない照れない」
「照れてません」
アルファがクォの秘密を探るために一緒になって行動するようになってから今日の対戦まで、結局二週間しか経っていなかった。
 アルファの説得は効果を発揮しないだろうとは思ってはいたが、まさか昨日の今日で対戦することになるとは思わなかった。
 結局、ジュオーンの自信の理由はわからなかったが、それを見越して、この素早い対戦の申し込みだとしたら、見事と言う他はない。
 ジュオーンはクォのことを知っているが、クォはジュオーンのことを何も知らないのも同然だ。
「じゃあ、戦う場所は、例によって僕に決めさせてもらいますよ」
「うん」
場所を決められることでさえ、どれだけの効果があるかは怪しいところだったが、決めないよりはマシだろう。
 クォが選んだ場所は、学園の持つ三つの校庭の内、もっとも広い校庭だった。フェンリルを本当に呼び出せるとは思わないが、ジュオーンは召喚術の使い手だ。自由に動けるように、広い場所を選んでおくのは悪くない考えだと思った。
 時刻は、午後六時を回っていた。今日は平日だったから、理事長戦は授業が終わった後だ。
 校舎の大鐘が大きく三回鳴らされた。それと同時に、校庭が、光を放つ魔法を封じ込められた石で照らされ、秘書のシリルが、声を拡大する魔法によって、学園の敷地内に響き渡る。
 理事長戦が始まる合図だ。
 クォ自身は『耳』があるから、必ずしも明かりが必要なわけではないのだが、理事長戦は、戦う本人にとって重要なものであるのと同時に、理事長戦に参加しない者達にとっては格好の見世物でもある。
作品名:白狼のクォンタム 作家名:今朝人