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りりなの midnight Circus

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第三話 高町教導官


 部屋を出た二人、高町なのはとエルンスト・カーネルはそのまま一言も会話を交わすことなく執務棟の廊下を歩いていた。
 ただ黙ってなのはの後ろを歩くエルンストの雰囲気になのはは酷く居心地を悪くするが、それでも何とか彼に笑いかけ会話を起こそうとして失敗した。
 さすがにここまで来れば、多少人の心を読むことを苦手とする彼女にも、彼が自分のことを何故か嫌っているということが理解できた。
 しかし、その理由は全く思い当たるところがなかった。今日初めて顔を合わせるはずの相手が自分によい印象を抱いていないのだ、長年連れ添った仲間達ならいざ知らず彼女にはその理由を知るよしなど何処にもあるはずがない。
「ごめんね。本当ならここを案内するべきなんだけど、午後からの訓練が押してるから、後になりそうなの」
 なのはは、一週間前にここに出向になったばかりでエルンストが本来ならここ所属である事を知らない様子だ。
 ここに所属しているというのは何かと語弊がある。エルンストは教導隊所属の陸士ではないが、"書類上"の所属はこの陸士教導隊ということにされているに過ぎないのだ。ニコルもそうだった。故に、彼の死が"訓練中の事故死"ということにしても誰も疑いを持たないということとなる。
 おそらく自分が任務中に死亡しても、ニコルと同じように訓練中の事故死で片付けられるのだろうな、とエルンストは細く微笑むと、きりっとした表情でなのはに向き合った。
「いえ、ここの構造は熟知しておりますので問題ありません。高町一尉」
 ただし、構造は熟知しているとは言ってもそこに所属する人間との交流は浅く、彼がここにいる事を知らないものもここには多いことだろう。
 朝にこの訓練所に足を運んだ時も、すれ違う者達から怪訝な視線を向けられたことにエルンストは少し安堵した。
 はっきりと言おう、既に周知の事実かも知れないが、エルンスト・カーネルは人間不信のまっただ中にあるのだ。だから、その中でもエルンストがある程度友人として認めたニコルは貴重な人間だった。ニコルの前に組んでいた、今では名前も思い出せない相棒も任務中に死んだ。彼もエルンストに取っては悪くない相手だと思われていた。
(死ぬのはいつでもいい奴ばかりだ。結局また生き残ってしまった。)
 だったら、食堂に行こうと言って彼を食堂に案内するなのはについてエルンストも歩を進める。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪